医学は本当に日進月歩です。AGAや加齢による抜け毛の原因と考えられることが解明されました、

2016年2月、東京医科歯科大学の西村栄美教授率いる研究グループが、「加齢による薄毛とコラーゲンとの新たな見解」を発表しました。

コラーゲンと毛髪の関係を考えながら、当研究グループが発表した薄毛の原因物質「17型コラーゲン」をご紹介します。

コラーゲンと毛髪

コラーゲンとはたん白質です。人間の場合、体重の約20%がたん白質です、ちなみに一番多いのは水分で、体重の約60%を占めています。

そして、たん白質全体の中で約30%がコラーゲンです。コラーゲンの体内分布状況は皮膚に一番多く、次に多いのが骨や軟骨です。

他に内臓や血管にも含まれています。このようにコラーゲンは、体の構成成分として重要な役割りを果たしています。

コラーゲンと言えば、肌のハリやツヤを与え、若さを保つ成分としてよく知られていますが、毛髪も皮膚の一部であり、毛髪を太くする働きがあります。

 

コラーゲンが皮膚などに辿り着くまでの作用機序

肌のハリやツヤを保つためにコラーゲンを食事で、あるいはサプリで摂ろうとしますが、体内に入ったコラーゲンはそのままの形では吸収されません。

コラーゲンはたん白質なので、体内に入ると消化酵素などによってアミノ酸ペプチドなどに分解されます。

そのアミノ酸は腸で吸収され、再び、コラーゲンになるのですが、このときビタミンCの力が必要になります。

従って、コシの強いしっかりとした髪の毛を作るためには、コラーゲンだけでなくビタミンCの存在も重要ということです。

 

AGAや加齢による薄毛は成長期が短縮される

東京医科歯科大学の西村栄美教授らの発表内容をしっかりと理解するために必要な知識です。

AGAになる大きな原因として、男性ホルモンのテストステロンが5α-リダクターゼによって変換した物質のジヒドロテストステロン(DHT)がありますが、今回の研究発表はAGAでなくても男性女性のほとんどにみられる加齢による薄毛がテーマです。

髪の毛が生えて抜けるまでのヘアサイクルは「成長期」「退行期」「休止期」に分けられると前述しました。

AGAの場合、3つの期間のうちの成長期が短くなるため、髪の毛がしっかりと成長できないままに次の退行期に入ってしまいます。

そのため、細くコシのない軟毛ばかりが増えるので、薄毛になっていきます。また、薄毛はメラニン色素が少ないため、十分な成長期で育った硬毛に比べて色も薄くなります。

成長期は毛髪の成長だけでなく、毛が成長するのに必要なものが入っている毛包も成長もしていきます。AGAのように成長期が短縮されると、毛包も毛と同様に十分、大きくならないうちに退行期に入ることになります。

その結果、毛包は徐々に小さくなってしまいます。これを「毛包のミニチュア化」と言います。

後程、よく出てくる言葉なので、しっかりと理解しておいてください。

前述したDHTも毛包のミニチュア化を起こす原因の一つと考えられています。

「毛包のミニチュア化」を改善することが成長期を長くして硬毛を作り出し、薄毛を予防していくことになるのです。

 

そして、幹細胞という語句も良く出てきます。

古い髪が抜ける時期になると、幹細胞を作り出す部位であるバルジ領域から幹細胞が放出されます。

この幹細胞が毛根に移動し、毛の伸長に関与する毛母細胞になります。

 

加齢による薄毛予防には17型コラーゲンが必要

AGAは頭頂部や生え際が薄くなっていき、年齢も早ければ、20、30代の人でも見られることがあります。

勿論、加齢現象も見られ、加齢とともにAGAになる人が増えていきます。

その一方で、AGAにならなかった人も加齢とともに漠然と薄毛は進行していきます。

先ほど紹介させていただいた西村栄美教授の研究グループの発表は、新聞やテレビニュースという簡便な方法で知っただけですが、AGAという男性型脱毛症という語句は出ず、AGAではなくほとんどの人に出現する可能性がある冒頭でも述べた「加齢による薄毛」がテーマとなっていました。

なぜ、こんなことを長々と述べるのかと言いますと、もしかすると、きちんと書かれた論文のほうにはAGAのことも書かれているのかもしれない、ニュースだからまとめて「加齢による薄毛」と出したのかもと、考えるのです。

まだまだ、不明な点が多いとはいえ、大変、画期的な朗報ともいえるこの新しい解明について考えてみたいと思うのです。

 

毛髪が薄くなり、脱毛していく過程を解明

毛包幹細胞は毛の成長に必要な毛母細胞を供給しながら、ヘアサイクルに合わせて分裂していきます。

しかし、年齢とともに毛包幹細胞は自分のコピーを作成しなくなり、毛母細胞を産み出す代わりに皮膚の表皮に存在する角化細胞に化けてしまい、皮膚の表面からフケやアカとなって剥離していくことがわかりました。

この現象は前述した毛包のミニチュア化を促すため、成長期が短かった証でもある細くコシのない毛となり、抜けていき、薄毛となっていきます。

この毛包のミニチュア化は、AGAで毛髪が抜けていく過程でもありますが、AGAではなくても単なる加齢による生理的な薄毛でも毛包のミニチュア化がおきることが解明されました。

上記のように毛包幹細胞が分裂するなどして働いている最中に、DNAが損傷するとその傷を修復しようと作動するのですが、その作動が加齢等の原因で遅れる細胞が出現してきます。

 

キーワード「17型コラーゲン」

ここでやっと、この記事のキーワード「17型コラーゲン」が登場します。

作動しなくなった毛包幹細胞の中にあるべきコラーゲンが、分解されて枯渇していることを西村教授たちは確認しました。

あるべきコラーゲンとは17型コラーゲンのことです。

西村教授たちはすでに「7型コラーゲンが白髪や脱毛を抑制する作用をもっていて、17型コラーゲンが脱落すると、毛包幹細胞の維持機構が崩れてしまい、毛包のミニチュア化などが進行し、白髪や脱毛がおきる」ことを解明していました。

話を元に戻しますが、作動しなくなった毛包幹細胞は前述したように角化細胞に化けてしまい、最後、フケやアカとなって皮膚から剥離していく運命になるわけです。

これらの実験は最初、マウスで行なわれ、確認されました。次は人間でも同様の現象がおきるかどうかを調べる必要があります。

大分県別府市にある、別府ガーデニングクリニック美容外科「くらた医院」の協力で美容整形手術などで切除した側頭部の皮膚を入手し、実験を行ないました。この実験で50後半から70

歳までの女性は毛包のミニチュア化が進行していて、17型コラーゲンの減少を確認しました。

 

今後の期待:17型コラーゲンを枯渇させない物質の発見

今回の実験で17型コラーゲンが分解されないようにすることで、劇的に薄毛(脱毛)、白髪の加齢現象という変化を抑えることも確認できています。

この研究の成果は「老化」という大きなテーマの解明への道標となり、色んな脱毛症の治療法や新薬の開発、さらには全般的な加齢疾患への治療や予防へと期待される分野です。

 

AGAも毛包のミニチュア化が認められますが…

今回の研究発表は、表向きAGAのことはありませんでした。

ただ、AGAの治療薬フィナステリドが5α-リダクターゼ阻害薬で効果が少なくとも見られることから、老化というよりは若い世代でもAGAの発症が見られることから、男性ホルモンが原因である可能性は高いと言えます。

しかし、たとえ、原因が男性ホルモンであってもAGAも脱毛の過程は、毛包のミニチュア化を認めることから、西村教授らのこれからの研究でAGAに対する朗報も期待できるのではないでしょうか?