ミノキシジル関連サイトを見ると、ミノキシジルの発毛作用は血管拡張作用を中心に取り扱ったものと、ミノキシジルの発毛作用は血管拡張以外の作用も含めているものがあります。

やはりというか、後者は医師や医療関係者のサイトに多く見受けられます。

発売元:大正製薬の解説

大正製薬が出している薬局向けの製品カタログでミノキシジルのページを見ますと、「ミノキシジルが毛包に直接、作用し、細胞の増殖やたん白質の合成を促進することにより、優れた発毛効果を発揮します」と記載しています。

(大正製薬発売品要覧から引用)

上記の言葉の中に血管拡張作用という語句、あるいは似たような表現はありません。ただ、血管が拡張し、栄養を毛包まで行き渡らせ、その栄養をエネルギーに細胞増殖(分裂)を行ない、発毛を促進というふうにも考えることはできます。

しかし、他のサイトでも見られるように、血管拡張作用だけでなく、ミノキシジルが直接、毛包周辺に作用をすることで発毛効果を促しているとも考えられています。

血管拡張作用のみで、発毛促進効果が見られるのではないことは明らかにされています。

もし、血管拡張作用のみしかないミノキシジルであれば、おそらく、血管拡張作用のある生薬成分が入った医薬部外品のその他大勢の育毛剤と変わりがないと言えば、言いすぎでしょうか。

ミノキシジルの発毛作用は血管拡張作用だけではない

皮膚科学会のガイドラインの推奨度Aのフィナステリドと同様にランクされているということはやはり、血管拡張作用以外の非常に効果的な作用があるためと考えることができます。

では、血管拡張作用以外に、ミノキシジルが持っている効果的な発毛作用とはどんなものがあるのでしょうか?

その前にこれらをよく理解できるように、AGAの頭皮下ではどのようなことが起きているかを考えてみましょう。

  • 成長期の期間が短くなるため、毛包が十分に大きく(成長)なることができません。つまり、毛包のミニチュア化が始まります。
  • 休止期に入った毛包がなかなか成長期に移行しないので、薄毛が進行していきます。

上記の2点が改善されて初めてAGA改善効果があるわけですが、最も重要なのは①の方になります。成長期のショートカットや毛包のミニチュア化が改善されてこそ、毛髪は正常に発毛し始めるのです。

ミノキシジルが誘導する発毛メカニズム

ミノキシジルは成長期を延長させ、毛包のミニチュア化を改善することで発毛を促します。

これは主に下記の3つの作用によって行われます。

 

1.細胞増殖(分裂)と細胞成長因子の生成

実はミノキシジルの細胞への作用は細胞増殖を促す作用と抑える作用、両方が存在しており、どちらか一方の作用というわけでもないようです。

人間と同じようにAGAを発症するベニガオザルの毛組織細胞に、ミノキシジルを添加して培養しました。

その結果、毛組織細胞には細胞増殖作用がみられ、それ以外の細胞には弱いですが、細胞増殖を抑えました。何故、このような現象がおきるのかはまだ分かっていません。

しかし、とにかく毛組織細胞に対しては、細胞の増殖を促す細胞成長因子が分泌されることが証明されたことになります。

  • 成長期に分泌される細胞成長因子:VEGF、IGF-1、HGF、KGF、FGF-5Sなど
  • 成長期を早く終らせる細胞因子:FGF-5、TGF-β、トロンボスポンジン、ニューロトロフィンなど

成長期の長さは上記の細胞因子のバランスで決まってきます。

 

細胞成長因子の働き

VEGF

AGAが発症している部位にはあまり発現せず、VEGFが分泌した部位やその近隣の部位の毛乳頭細胞増殖を促します。

また、成長期から退行期に変わるにつれてVEGFの分泌が低下していきます。

 

IGF-1

人間のヒゲの毛乳頭細胞上で、男性ホルモンによって生成される成長因子です。

また、IGF-1は成長期から退行期への移行をストップさせる働きを持っています。

IGF-1による多毛症の報告もあります。

又、IGFに結合したたん白質があらゆる部位に存在しています。

  • 毛乳頭:IGFBP-3~5
  • 結合組織性毛包;IGFBP-4~5
  • 毛乳頭・毛母組織の境界:IGFBP-4

上記の中で、細胞の増殖の司令塔である毛乳頭に存在し、IGF-1に対して抑制的に働くIGFBP-4は、微量であるため、この因子が与える影響はないと考えることができます。

成長期に入った毛乳頭に存在するたくさんの結合組織に、IGFBP3とIGFBP5が吸着してしまいます。そのため、これらの因子の活性化を抑えてしまいます。

その結果、IGF-1はフリーとなり、思う存分、活性化して、毛母細胞の増殖を促します。

 

★この中でミノキシジルは、毛乳頭細胞にあるVEGFとIGF-1の生成と毛包のHGFを発現させる作用を持っています。

また、IGF-1自身の作用をさらに強化したり、HGFの生成を促す作用も報告されています。

ミノキシジルが細胞成長因子の生成を促すメカニズムについてはまだ、解明されてません。

しかし、VEGFが乳頭細胞で生成されるのを促進させるミノキシジルの作用は、アデノシンA1レセプターに作用し、細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇させることに関係しているのでは考えられています。

 

2.毛母細胞のアポトーシスを抑制

アポトーシスとは、その部位をよりよい状態にするために率先して行われる細胞の死滅のことです。例えば、オタマジャクシがカエルになる時、尻尾が消失するのはアボトーシスのメカニズムによるものです。

成長期にある毛包が退行期に入るのはTGF-βという因子が原因です。TGF-βがアポトーシスをひきおこすしてしまいます。

そこで、ミノキシジルの作用は毛母細胞などのミトコンドリアKATPを開放することで、アポトーシスを抑え、発毛効果を促します。

ATP感受性KチャネルのことKATPと言います。ATPの濃度が一定のレベルより下がると、KATPが開放されます。

ATPとはアデノシン三リン酸のことで、エネルギーを出す、つまりエネルギー源となる物質のことです。

 

3.血流改善

ミノキシジルは血管平滑筋のKATPを開放して血管平滑筋を拡張させます。毛包の周りにはたくさんの血管が網羅しており、毛乳頭の中にまで血管は入りこんでいます。

そのためこの血管を拡張させるということは、血流改善に効果があり、その結果、栄養が毛乳頭、毛母細胞にまで運ばれて、発毛を更に促進させることができるということになります。

皮膚血管の血流増加は実験でも証明されてはいますが、毛組織においてはその証明はまだされていないと研究者達は考えています。

この血流改善による発毛効果よりも、ミノキシジルは①や②の血流云々とは無関係の毛組織への直接作用のほうが確実に照明されていることから、どちらかいうと、この毛組織直接作用のほうがこれからは重要になっていくのではとも考えているようです。

結局、ミノキシジルの作用を大きくまとめると、ヘアサイクルの中の成長期を延長させ、毛包のミニチュア化を改善して、発毛効果を促すということになります。

 

その他の作用

ミノキシジルの作用は上記の通りですが、その他の作用もあり、紹介いたします。

 

プロスタグランジン産生

ミノキシジルはプロスタグランジンÈ₂を生成します。

プロスタグランジンÉ₂は、細胞成長因子の一つであるIGF-1の生成を促進します。

 

男性ホルモンを介さない

ミノキシジルの毛組織等への直接作用はフィナステリドのように、男性ホルモンを介したり、男性ホルモンがベースにあるものではありません。

そのため、ミノキシジルの発毛効果は、AGAに限らず、他の脱毛症の改善に効果があると考えられています。例えば、円形脱毛症、抗がん剤などの化学療法剤による脱毛症の改善にも効果が期待できる可能性があります。

また、ミノキシジルはフィナステリドを使用出来ない女性にも有効です。

参考文献 日薬理誌(Folia Pharmacol Jpn)119