プロペシアを飲んでいる人が突然、止めようという気になり、本当に止める場合とはどんなときでしょうか?

副作用に悩まされたとき……、もう、薄毛のままでいいと気持ちの切り替えができたとき……、あるいは薄毛が改善されたのでひょっとしてやめてみようかと思い立ったとき……。
色々、考えられると思います。
ところが、長い間プロペシアを飲んでいる人が突然中止すると、精神状態や色んな性機能がプロペシアを飲む前と同じ状態になかなか戻らない人が多いことがわかりました。
このような症状をポストフィナステリド症候群(PES)という病名がつけられました。・

これから、このポストフィナステリド症候群を中心に検討してみたいと思います。
ただ、まだまだ、これらについては未明な部分も多く、はっきり結論づけることはまだ困難な領域の疾患であることを先にお伝えしておきます。

プロペシアを辞めても副作用が続くPFS

一般的な薬は、中止すればその薬がもたらした副作用の症状は消失するのですが、プロペシアの場合には中止後でもときに性機能低下やうつ症状といった副作用が続く場合があるという報告がありました。

2012年、アメリカのジョージワシントン大学の教授マイケル・アーウイング氏がフィナステリド製剤を飲んでいる人は、飲まない人よりもうつなどの精神症状などが出やすいと発表しました。
また、プロペシアの添付文書でも、使用上注意に「注3)投与中止後も持続したとの報告がある(引用)」と市販後において掲載されています。
要するに、市場に出回るまでは予測されなかったことで、市販後たくさんの人に使用されたことによってわかってきた事柄なのです。
現在では、まだPFSに対しての改善策がはっきりと確立されていないようです。

PFSになる人がそんなに多いわけではない

PFSを検索すると、たくさんのサイトの記事があるため、驚いたり、落ち込んだりすることでしょう。
しかし、全体的にはあまり多いケースではなく、プロペシアを中止しても、何の症状もなしに元気に暮らしている人もたくさんいるということも知っておいてください。
無駄に怖がる必要もないと思われます。

ただ、プロペシアの場合、他の副作用以上に性機能低下やうつ症状の発現が見られていることも事実です。
以下の情報は副作用が無い人には情報を収集するつもりで、副作用を自覚する人はPFS症候群を正しく知るための手段として読んでいただければと思います。

PFSになる原因について

2013年にイタリアで行われた医学会で、非常に注目を浴びた発表がいくつかありました。その中の一つで、「PFSの患者さんの脳脊髄液の中に存在するニューロステロイド(神経ステロイド)の減少」という前述したアーウイング教授の仮説が実際に確認できたという発表です。

参考URL:NCBI「Finasteride treatment and neuroactive steroid formation」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19655698

参考URL:NCBI「Persistent sexual side effects of finasteride for male pattern hair loss.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/214181

参考URL:ヤフー知恵袋「プロペシアの副作用を誘発する研究においての新たな発表 2013年」
https://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n168818

まず、ニューロステロイドとは何でしょうか?

 

神経ステロイドは脳で作られる

今まで、ステロイドホルモンは、それぞれの標的臓器で作られていると考えられていました。
例えば、男性ホルモンは副腎や精巣などに、女性ホルモンは卵巣で作られるというふうに……。

しかし、1980年代、ステロイドホルモンは脳内にもたくさん、存在していると解明されました。
つまり、脳の神経組織でも男性ホルモンなどのステロイドホルモンが作られるということです。
このように、神経組織の中で作られるステロイドホルモンを神経ステロイドと言います。
神経ステロイドには、精神の安定化という重要な働きがあります。

参考URL:恵愛病院コラム「神経ステロイド(neurosteroid)をご存知ですか? その(1)」
http://www.keiai-kmt.or.jp/column/26.html

脳で作られる神経ステロイドの減少がPFSを発症させる説が有力

副腎や精巣などで作られる男性ホルモンとは、区別して考えます。
男性ホルモンの減少は性機能低下や性欲減退の他にうつ症状も誘発しますが、PFSの症状も性欲減退、性機能低下だけでなく、うつ症状などの精神症状も出現する人も少なくありません。

ということは、PFSの症状は男性ホルモン減少のときの症状と重なる部分が多く、このようなことからもPFSのうつ症状などは神経ステロイド減少が原因と考えることができるわけです。
ただ、まだまだ、不透明な部分も多く、断定するところまでは至っていません。

副腎や睾丸からの男性ホルモンも減少

副腎などから作られる内因性男性ホルモンの減少もPFSを発症させる一つの原因とする下記の参考URLの記事を書かれた医師の仮説に私も同意いたします。

できるだけわかりやすく説明してみますね。
フィナステリドは5α-リダクターゼの働きを抑えることで、男性ホルモンのテストステロンからDHTへの変換をストップさせます。
そのため、フィナステリドを飲み始めた時点では、テストステロンの量は一時的に増えます。何故なら、DHTに変われなくなっているのですから……。

つまり、テストステロンの血中濃度は上昇します。そして、この状態が続くと、「もうテストステロンはたくさんあるから、作らなくていい」と判断し、テストステロンはやがて、作られなくなります。この現象を負のフィードバックといいます。

やがて、体内のテストステロンの量は減少し、いわゆる男性ホルモン欠乏症状が出現します。
フィナステリドを飲んでいる最中であればこのような副作用も納得できますが、フィナステリドを中止しても欠乏症状は依然として続く人がいます。
これがPFSです。

いつかはフィナステリドを飲む前の状態に戻るかもしれませんが、フィナステリドによって長い間、抑えられ続けたテストステロンはフィナステリドを止めたからといって、すぐにテストステロンの量が増え、正常近くになるものではなく、元に戻るのには、時間がかかると考えます。

ここで、テストステロンの減少もPFSの原因の一つならば、外からテストステロンを補充してやればという考えが浮かびませんか?

しかし、これは逆効果なのです。つまり、前述した負のフィードバックが起きるためです。

PFSの治療に外からのテストステロン補充はNG???

体内のテストステロン量が少ないからと、外からテストステロンを補充し続けると、どうなるでしょうか?
外からテストステロンが体内に入ってくると、負のフィードバックが働いて、体の中ではテストステロンは作る必要なしと判断し、内因性のテストステロンの生産はストップします。
そのため、外からのテストステロンの補充をした場合、急激に体内のテストステロンが減少して、性機能低下、うつ症状など男性ホルモン欠乏症状が出やすくなります。

従って、PFSの症状改善のために外からのテストステロンの補充という治療法は、決して良い選択とは思えません。
ただ、テストステロンが減少する病気、例えば重症なLOH症候群などでは、テストステロンなどの補充治療が行なわれることもあります。

※LOH症候群とは:男性ホルモンが減少する病気でED・睡眠障害・イライラなどの症状がああります。

参考URL:医師が本気で考えるAGA治療「フィナステリドの副作用 ポストフィナステリド症候群を中心に」
http://agablog.tokyo/minoxidil-finasteride/106

プロペシアを中止するとき、その後も必ず医師とともに

 

プロペシアを中止するとき、いきなりやめる、または、少しずつ減量していくなど、医師はプロペシアを飲んでいた期間、患者さんの状況、性格などから色々、考えることでしょう。
中止後のPFSの可能性までを視野に入れ、医師の指導の下で正しい性機能の正常化、精神症状の改善などに取り組むことが、PFSの予防につながります。
また、前述したように、PFSにならない人もたくさんいます。それでも、このような病気の情報を知っておけば、自分ではなくても、友人が似たような症状で苦しんでいるときなど、どこかで役に立つことでしょう。