プロペシアの有効成分であるフィナステリドには、低確率とはいえども、性欲減退、勃起不全、射精障害などの副作用があることが知られています。そんなことを聞くと、夫が男性型脱毛症(AGA)の治療のためにプロペシアを飲んでいるときは子供ができない可能性があるのかと心配になってしまいます。でも、怖いのはそれだけではなく、妊娠した場合の胎児の成長にも影響を与える可能性があるのです

日本でのAGA治療法の選択肢はそんなにたくさんあるわけではなく、プロペシアは厚生労働省がAGAの治療薬と認めた数少ない薬の一つで、AGAの治療のために病院を受診するとなるとプロペシアの使用を避けられないというケースも多くなります。
一方、プロペシアの副作用としては性欲減退や勃起不全といった副作用があるという話をよく聞きます。

AGAは加齢に伴うテストステロンの減少が原因と考えられており、年齢にして30歳を超えたあたりから薄毛や抜け毛に悩み始め、育毛剤育毛シャンプーを試される方が増加すると思いますが、その年齢は「子供がもう一人ほしい」と考える年齢と合致するという男性は多いと思われます。
もちろん、まだ1人も自分の子供を作っていないのに、AGAの兆候が出始めるということもあるでしょう。

「性機能異常になるぐらいならハゲでもいい」というネットの書き込みがありましたが、「子供」も「髪の毛」も両方望むというのは贅沢なことなのでしょうか?
性欲減退や勃起不全といった性機能障害は間接的、あるいは、直接的に妊娠に大きく影響を与えることになりますので、子供を望むのであればプロペシアの服用は控えるべきであると思います
でも、プロペシアを飲めばもれなく性機能障害になるということではないですよね?
副作用ですから、もちろん、そういうことになりますが、「自分は大丈夫!?」という根拠のない自信は捨てて、リスクはリスクとして知っておくことは大切です。というわけで、プロペシアの副作用について検証するとともに、妊娠を優先するのであればプロペシアの利用を控えた方が良いという理由について、順を追って説明したいと思います

 

プロペシアの性欲減退や勃起不全という副作用は何故起こる?

男性型脱毛症(AGA)は、テストステロンという男性ホルモンの減少に伴う男性ホルモン活性の低下を補うために、テストステロンをより活性の高いジヒドロテストステロン(DHT)に変換することによって起こります。
プロペシアの有効成分であるフィナステリドはテストステロンがDHTに変換されることを抑制することによって、AGAによる抜け毛を防ぐために使用されます。
言い換えるならば、抜け毛を防ぐためにプロペシアを飲むことによって、体内の男性ホルモン活性は低下してしまうことになり、脱毛を抑えることはできますが、男性ホルモン活性の低下に伴う副作用が発生するリスクがあります。

男性ホルモンは細胞に存在する男性ホルモン受容体に結合することで機能を発揮し、以下のような働きがあります。

  • 男性器の形成と発達
  • 変声
  • 体毛の増加
  • 筋肉増強
  • 性欲の亢進

通常は、AGAに悩む男性は30歳以上ですので、男性器の形成と発達や変声は終了していますし、ベースとなる骨格筋もある程度までついていると考えられますので、気になるフィナステリドの副作用は性欲減退並びにそれに関わる勃起不全というわけです。

参照元:ウィッキペディア アンドロゲン
https://ja.wikipedia.org/wiki/アンドロゲン

 

MSD株式会社が公開している副作用情報は?

製造販売元であるMSD株式会社で公開されている副作用情報は以下の通りです。(公式サイトで発信されている情報をそのまま引用しております。)

フィナステリド錠服用に関する注意事項 「フィナステリド錠の副作用は?」

国内で実施された臨床試験(1年間)において、4.0%(276例中11例)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められています。主な症状はリビドー減退1.1%(3例)、勃起機能不全0.7%(2例)等でした。このような症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。
まれに、食欲不振、全身倦怠感(肝機能障害)の症状があらわれる可能性があります。このような場合には、使用をやめて、すぐに医師の診療を受けてください。

肝機能障害というのはフィナステリドの代謝に伴う肝臓トラブルによるもので、男性ホルモン活性低下が関係することは無さそうですが、リビドー(性欲)減退や勃起不全というのは明らかに男性ホルモン活性の低下によるものです。
1%未満の副作用の中には射精障害や精液量減少というものもありますし、生殖器関係の頻度不明の副作用には、睾丸痛、精子濃度が減ってしまったり、精子の運動性低下や形態異常など典型的な男性不妊症の症状がある人の報告もあるようです。

ただし、陰茎海綿体に血液を送り込むことで勃起することを考えると、肝機能障害に伴う血流悪化は勃起力の低下につながるため、間接的に勃起不全に影響している可能性はあります。

参照元:医薬品情報データベース プロペシア錠0.2㎎ プロペシア錠1㎎
http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00051088.pdf

 

男性ホルモン活性の低下は胎児や乳児に影響する?!

先に示したMSD株式会社が情報公開しているサイトでは、注意事項として、妊娠している女性や授乳中の女性がプロペシアを服用することによって「男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼすおそれがあります。」とも書かれています。

女性の体内にも男性ホルモンは存在しますのでAGAが起こらないというわけではありませんが、女性の脱毛症は女性ホルモンのバランスの乱れが主な要因と考えられており、プロペシアが女性の脱毛症に効果を示すことも副作用を発症することもほとんど無いということです。
しかし、女性が妊娠している、あるいは、授乳しているというケースでは、血液や母乳を経由して母親から胎児や子供の体内に供給されるフィナステリドによるは男性ホルモン活性の低下が胎児や乳幼児の生殖器官の成長を妨げる可能性があるというわけです。

それならば、飲まなければよいということになりますが、フィナステリドは皮膚から吸収される可能性があります。

コーテイングされている錠剤そのものは大丈夫ですが、破損や意識的に割って内部がむき出しになった錠剤に触れることで体内に吸収される可能性があるというわけです。
経皮吸収の場合には、量的には少ないかもしれませんが、成長が活発な胎児や乳児には大きな影響があるかもしれません。

当たり前の話ですが、プロペシアの服用に当たっては、家族が知らずに触ることが無いように保管管理をしっかりすることが推奨されます。
特に、妊婦や授乳中の女性、あるいは、お子様が触れることが無いようにするということは、重要な注意項目となります。

参照元:AGA-news フィナステリド錠の適正使用について フィナステリド錠服用に関する注意事項
http://www.aga-news.jp/secure/caution_use/index.xhtml

1%前後とはいえ、性欲減退や勃起不全のリスクを考えると、妊活のためにはプロペシアを控えた方が良いという考え方はよくわかります
1%を低いと考えるのか高いと考えるのかは個人の考え方ですが、自分がそれに当てはまった時には、その人にとっては100%であるということは頭に置いておくべきです
それはそうですね。例えば、プロペシアを服用していた時に副作用が出てしまったら医師に相談ということですが、一度なってしまうと復帰は難しいのでしょうか?
ほとんどの副作用は服用を止めて血液中の濃度がゼロになると副作用の症状は無くなるということですが、性欲減退といった精神的な問題はそんなに簡単ではないという話もあります

 

プロペシアの副作用は服用を止めれば改善するのか?しないのか?

副作用については臨床例が少なく、服用中止によって改善される場合もあれば、改善しないというポストフィナステリド症候群と呼ばれるケースも報告されており、専門家の間でも様々な意見があるようです。
アメリカでは、フィナステリドの服用を中止しても改善しない、副作用というよりも後遺症というべきポストフィナステリド症候群の研究を行うポストフィナステリド症候群財団(The post-finasteride syndrome foundation)も立ち上げられているということです。

参照元:Post-Finasteride Syndrome Foundation
http://www.pfsfoundation.org/


一般的には、副作用というのは服用した薬の影響で起こるわけですから、薬の成分が無くなれば、すなわち、血液中の成分濃度が消失すれば薬効とともに副作用もなくなると言われています。
しかしながら、フィナステリドにみられる副作用はケースバイケースで、特に、メンタル面にでてくる性欲減退や性欲が無くなることによる精神的な勃起不全というのはそれほど簡単なことではないようです。

服用中止によって精子数が回復したという報告:

アメリカ生殖医学会雑誌「Fertility and Sterility」において発表された論文で、フィナステリド服用中に精子の量が減少していた14人の被験者において、精子の量が服用中止後に平均で11.6倍に増加したという内容です。加えて、服用を中止した後に精子の量が減少したという人はいなかったそうです。

ここで注意したいポイントが、精子の量が上昇したという結果が平均値であるということと服用を中止することで精子の量がさらに減少した人がいないということです。
裏を返せば、増加しなかったという人が14人の中にいる可能性もゼロではないということを意味するものかもしれません。

参考元:ヨミドクター:オトコノコト 医師 小堀善友のブログ「髪の毛を取るか、精子を取るか」
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20131224-OYTEW54278/

このサイトは、男性不妊の研究をしておられる泌尿器科の医師の立場にある人で、フィナステリドを服用している男性患者で精子異常が認められる場合には、フィナステリドの服用を中止するということが治療の第一歩としている医師です。
そして、服用を中止した患者の中でも、中止によって改善が認められなかった患者さんもおられるということです。

服用を中止しても性欲減退などが改善しないという報告

過去にフィナステリドを服用し現在は止めているという21才から46才の健康な男性71人に対するアンケート調査をまとめた結果です。フィナステリドの服用期間は平均で28ヶ月間、中止してからの平均期間は40ヶ月ですが、性欲低下(94%)、勃起不全(92%)、オーガズム異常(69%)るということで、90%以上の人が副作用の改善が認められていないという結果になっています。

参照元:肌のクリニック 院長のAGAブログ フィナステリドの副作用 ポストフィナステリド症候群を中心に
https://agablog.tokyo/minoxidil-finasteride/106

こちらの結果も、副作用の症状や副作用が発症してからの期間など程度の差もあると推測されますし、長期にわたっていることから性欲減退の原因がフィナステリドの服用によるものではなく加齢に伴う別の要因も否定できず、一概には結論づけられないものがあります。

結局のところ、プロペシアの副作用が発症してしまった場合には、服用を止めるだけで治るのかどうかは分からないということでしょうか?
治ったという人もいれば改善されない人もいるということは、そういうことかと思います。推測ですが、結果を見る限り、フィナステリドによる精子の量や異形といった機能障害は改善されやすいようですが、性欲減退といったメンタルな副作用は改善されにくいように思われます
育毛に執着しすぎて副作用に気付くのが遅れて、精神的な問題が複雑化してしまっているということもあるのかもしれませんね
勃起や精子の合成などの生殖機能の整備は脳が指示しているわけですから、メンタル面はかなりの影響力がありますし、そんな状況に長期間晒されているというのは副作用というよりも後遺症という方が正しいのかもしれません
副作用が出ていると感じたら、手遅れになる前に早めに医師に相談するというのが寛容かもしれませんね 。ところで、性欲減退が起こっても性行為が可能であれば妊娠は可能ですか?

 

プロペシアを飲んでいても子作りはできる?

医薬品には用法・容量を守るという前提があり、開示されている副作用の発症率も添付文章に記された用法・容量を守っていればの話ですし、性欲減退や勃起不全、さらには、射精障害、精子量の減少などの症状が出ても人によって程度の差はあると推測されます。
従って、性行為そのものが可能であれば、妊娠する確率は下がったとしても、可能性がゼロというわけではないと考えられます。

さらに、体の異常を感じて服用を中止すれば完全に改善されていないにしても、性行為が可能になるまで改善されさえすれば妊娠する確率も上がってくるかもしれません。

また、動物実験の結果ではありますが、プロペシアを服用中の男性であっても精液に含まれるフィナステリドの量は胎児に影響を与えることはないことがプロペシアの添付文書内で報告されています。
容量・用法を守っている限りは、妊娠中に性行為を行ったとしても、精液経由で入ってくるフィナステリドが胎児に影響を及ぼすことは無いというわけです。

いずれにしても、プロペシアの服用によって男性不妊に関係する副作用が出たときには、服用を中止したとしても妊娠の確率は低下すると考えた方が間違いなさそうですね

AGAの治療のためにプロペシアを服用しながら妊活をするのであれば、容量・用法を必ず守るということと少しでも異常を感じたらすぐに医師に相談することかと思います。

 

最期に

多くの医師や専門家が、子作りを優先させたいのであればプロペシアの服用を控えることを推奨しています。

また、育毛と子作りが前後して、プロペシアを服用中に子作りという案件が出てきたときには、休薬期間を設けることも推奨されています。
日本赤十字社ではフィナステリドを服用している人は血中のフィナステリドが無くなる服用中止してから1か月以上でなければ献血できないと規定していますし、MSD株式会社では安全性を重視して妊活開始は服用中止してから3カ月以降を推奨しています。

精液に混入する僅かなフィナステリドが胎児に影響を及ぼすようなことが無いという動物実験の結果は、現時点で異常が確認されていないということであり、絶対に安全であるという保証をしているものではありません。

参考元:日本赤十字社 東京都赤十字血液センター「献血の規準:ご遠慮いただく場合」
http://www.tokyo.bc.jrc.or.jp/current/index2.html
参考元:ユナイテッドクリニックコラム「フィナステリドと子作り」
http://www.united-ikebukuro.com/column/836/