センブリは育毛剤育毛シャンプーに配合されることの多い天然植物成分ですが、育毛剤に配合されているセンブリエキスに期待される効果は血行促進とされているものがほとんどです。
血行促進効果のある育毛成分として最も有名な成分はミノキシジルですが、ミノキシジルは育毛剤の中心成分となっているのに対して、センブリは各育毛剤の中心成分をサポートする成分として利用されていることが多いというのが現状です

センブリはゲンノショウコやドクダミと併せて三大民間薬として知られる生薬ですが、健胃、整腸、発毛が主に期待される効果と言われています。
センブリは苦味健胃剤という苦味チンキやセンブリ末として日本薬局方に収載されている医薬品の成分の一つで、医学的な位置づけとしては発毛というよりかは胃薬として存在していることになります。

胃薬の成分と発毛が一体どういう関係になるのかと不思議に思われるかもしれませんが、植物、特に、薬草と呼ばれる植物にはフィトケミカルやファイトケミカルと呼ばれるアルカロイドやポリフェノールなどの植物特有の生理活性物質を含んでいるものが多く、人の体に様々な健康効果をもたらすということは良くある話です。
センブリの発毛効果と言うのも、胃薬として利用されることの多いセンブリに見られる別の一面と考えられます。

薬草というのは万能薬みたいなところがあって、同じ薬草が地方や人によって用途が違うということもありますよね
特に、血行促進効果があるような薬草などは体内に入って血流が改善されることで、様々な健康トラブルが改善されるのでいろいろな体調不良が改善されることになります。でも、実際には特定の成分を抽出精製したメカニズムも解明されている医薬品と比べると「効果がマイルドで弱い!」ということも少なくありません
だから、育毛剤に使用されているセンブリエキスについては「意味がない」とか「効果が無い」とネガティブな評価をする人も多いのですね
効果がマイルドであるということは医薬品に見られることの多い副作用も弱い、あるいは、全くないということにもつながるので、メインとなる効果の強い育毛成分がある場合のサポート成分としてのセンブリは有効と考えられている部分はあると思います
センブリについての情報を知ることによって、目的とする育毛剤がどういった目的でセンブリを配合しているのかを考えることで育毛剤の良し悪しが分かるようになるかもしれませんね
伝承的に使われている薬草というのは、良きにつけ悪しきにつけ、周りの個人的な意見に惑わされることが多くなりがちかもしれませんので、この際、センブリの詳細を検証してみましょう

 

センブリは胃薬?発毛薬?

センブリが生薬として利用されるときの名称は当薬(とうやく)と呼ばれますが、当薬は日本特有のものであって漢方薬として使われることのない、いわゆる、和漢薬と呼ばれる生薬です。

ところが、実は、センブリの近縁種は中国やインドでも民間伝承薬、いわゆる、薬草として利用されている実績があり、特に、インドではインド大陸の伝統的医学であるアーユルヴェーダにおいて、日本のセンブリの類縁種であるチレッタ草(学名はSwertia chirata)が消化促進、整腸、発汗促進などの用途で使用されています。


日本でセンブリと呼ばれる植物は、Swertia japonica (Schult.) Makinoという学名の北海道西南部、本州、四国、九州にかけて広く分布する野草ですが、日本国内だけでもヒロハセンブリやムラサキセンブリといった近縁種が多く存在しています。

 

センブリはリンドウという植物の仲間!薬効の正体は苦味成分!?

センブリはリンドウ科センブリ属の二年草で、先に申し上げたように、学名をSwertia japonica (Schult.) Makinoといいますが、著名な植物学者である牧野富太郎博士が発見したことから命名された学名です。

リンドウは北海道を除く日本各地の野山に自生するリンドウ科リンドウ属の青紫色の釣り鐘型の花をつける野草の総称ですが、家庭の花壇を彩る観賞用の植物として園芸店でも販売されていますが、古来よりえやみぐさ(疫病草、瘧草)と呼ばれるほど薬草として知られている野草でもあります。

センブリは少し地味な白い花をつけるということで観賞用植物として広まっているリンドウとは少し異なりますますが、民間伝承薬として知られるようになっています。
同じリンドウ科ということもあり、様々な薬効がありますが、薬効成分としては健胃薬の中心成分である苦味配糖体と呼ばれるスウェルチアマリンスエロサイドアマロゲンチン アマロスエリンゲンチオピクサロイド、抗酸化作用のあるキサントン、血行促進作用のあるキサントン誘導体が含まれていることが知られています。

センブリに含まれる有効性が期待される成分

  • スウェルチアマリン:抗炎症作用・血行促進作用
  • スエロサイド:鎮痛作用
  • ゲンチオビクロサイド:抗酸化作用
  • キサントン:抗炎症作用・抗酸化作用
  • アマロゲンチン・アマロスウェリン:毛乳頭細胞活性化作用

参照元:ウィッキペディア センブリ
大阪大学リポジトリ リンドウ科植物を基源とする生薬の苦味成分の定量と 確認の研究

抗炎症作用、抗酸化作用や血行促進作用は育毛でも役に立つのではないですか?
そうですね。抗炎症と血行促進というのは、育毛剤に配合されている有効成分や天然成分に期待される効果の中でも、発毛、保湿に次いで多い効果かもしれません
やはり、発毛効果は育毛剤では絶対的に必要な効果ですし、保湿というのも頭皮ケアにおいて重要というのも、素人でも分かります
しかし、よく考えて下さい!発毛や頭皮の環境が 整っても、髪の毛をつくるための栄養素が毛根に運ばれなければ髪の毛が成長することはありませんし、頭皮の保湿力を上げても頭皮そのものの炎症が治まっていなければ直ぐに頭皮環境は悪化してしまいます
どんなにすごい主役を配した育毛剤でも脇役であるサポート成分が無ければ、育毛効果が得られにくい可能性もあるというわけですね。まるで、映画やテレビドラマみたいですね
良い例えですねぇ。名脇役がでている映画やドラマはヒットする可能性が高いというのと似ているかもしれません
あと、気になる点は、アマロゲンチン・アマロスウェリンによる毛乳頭細胞増殖促進作用という点ですね。センブリは十分主役もできるのではないですか?
それについては、そのデータが何処まで信頼できるかということに依存していると思われます

 

センブリエキスの育毛効果の評価はネガティブ?ポジティブ?

センブリエキスは、日本皮膚科学会によって提案された「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」において、推奨度C1に入っていない、すなわち、「この成分を使った治療を行っても良い」という程度の評価すら受けていない育毛成分です。

ただし、「行うべきでない」というC2の評価を受けているというわけでもなく、簡単に言えば、センブリエキスは脱毛症の診療ガイドラインには影も形も無い、すなわち、評価の対象外の成分というわけです。

「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」とは?

近年,男性型脱毛症のメカニズム解明に伴って様々な外用薬や内服薬が開発され世の中に出ていることを受けて、発毛・育毛成分に関する科学的な背景を調査し、医師及び患者に正しい情報を提供することを目的とした「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版)」が公開されました。
そして、2017年には、新規の発毛・育毛成分に関する情報を受けて、「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」という改訂版が公開されています。
すなわち、発毛・育毛効果があると言われている成分の科学的根拠を評価し、その成分の有効性についてランク分けすることによって、患者が正しい治療を受けられるようにの治療のための投薬に関するガイドラインの最新版が「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」というわけです。

もちろん、これは医療の現場で使用する、すなわち、治療に使うための育毛成分という意味の評価ですし、直接的に脱毛症に作用する効果が無ければ対象外となっていても不思議なことではありません。
従って、センブリエキスを育毛剤に使っても意味が無いということを表しているのではありませんし、育毛剤に使用されている成分のほとんどが「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」の対象外です。

参照元:公益社団法人日本皮膚科学会 日本皮膚科学会ガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」

他の成分と同じで、センブリエキスには脱毛症治療に使われる医薬品としての発毛・育毛効果が無いというだけですか?
それは、少し違っています。「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」においてC1やC2という評価を受けるということは、将来的にどうなるかは分かりませんが、現時点で明確に効果があるというレベルの科学的根拠が無いというだけです
ということは、センブリエキスの毛乳頭細胞の活性化に関するデータは医薬品として治療に使うだけの科学的根拠が無いということですね。でも、効果が書いてあるということは何らかのデータはあるということですよね
そうです。ということで、アマロゲンチン・アマロスウェリンの毛乳頭細胞活性化作用のデータについて検証してみましょう

 

アマロゲンチン・アマロスウェリンの毛乳頭細胞活性化作用とは?

アマロゲンチンとアマロスウェリンの毛乳頭細胞の活性化のデータというのは丸善製薬株式会社の特許に記されており、タイトルは「毛乳頭細胞増殖促進剤、テストステロン5α−リダクターゼ阻害剤、アンドロゲン受容体結合阻害剤、血管内皮増殖因子産生促進剤、骨形成タンパク質‐2産生促進剤、インスリン様増殖因子‐1産生促進剤、育毛剤及び頭髪化粧料 」と非常に長く、2007年に特許出願され、2013年に特許登録されていました。
タイトルは非常に長くなっていますが、毛乳頭細胞増殖促進作用だけでなく育毛につながる様々な作用があることが分かります。

アマロゲンチン・アマロスウェリンに期待される育毛効果

  • 毛乳頭細胞増殖促進剤:毛母細胞やケラチノサイトが活性化されることによって毛髪並びに色素の生産が活発になります
  • テストステロン5α−リダクターゼ阻害剤:男性型脱毛症の原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)血中濃度を低下させます。
  • アンドロゲン受容体結合阻害剤:男性型脱毛症はDHTがアンドロゲン受容体に結合することを抑制することによって、毛髪生産のストップを抑えます。
  • 血管内皮増殖因子(VEGF)産生促進剤:血管を新生する因子が増えることで血をがアップさせます
  • 骨形成タンパク質‐2(BMP-2)産生促進剤:骨形成は薄毛と関係ないように思えるかもしれませんが、BMP-2には髪の毛の主成分であるケラチンというたんぱく質の合成も活発にします
  • インスリン様増殖因子‐1(IGF-1)産生促進剤:効果は弱いが体内の細胞の増殖・分裂を活発にする因子で、毛乳頭細胞の活性化にも影響すると考えられます

これらの効果がすべてあるならば育毛剤の主役として遜色ないように思われますが、これらの実験データは細胞培養を中心とした実験室内で得られたデータであって、動物実験や人による臨床試験を実施して調べた結果ではありません。
当然ですが、育毛剤として配合しても体内で同じような反応が起こるかどうかも定かではありません。

しかも、このデータはアーユルヴェーダで使用されているチレッタ草の育毛効果について調べたものであって、日本のセンブリについて調べたものではありません。
先に申し上げたように、近縁種ですのでセンブリにもアマロゲンチンやアマロスウェリンは含まれており、似たような効果は期待できると推測されます。

参照元:Google Patent 毛乳頭細胞増殖促進剤、テストステロン5α−リダクターゼ阻害剤、アンドロゲン受容体結合阻害剤、血管内皮増殖因子産生促進剤、骨形成タンパク質−2産生促進剤、インスリン様増殖因子−1産生促進剤、育毛剤及び頭髪化粧料 

2007年に出願された特許ということは公開は2008年で、薄毛治療のガイドラインが初めて作成された2010年に間に合っているわけですから、科学的根拠として評価されていたのであれば、ガイドラインに掲載されてもおかしくないですよね?
そうですね。科学的根拠として認めてもらうためには、実験室内のデータもさることながら、それざれの作用のメカニズムの解明、動物実験、人による臨床試験などは最低限必要な情報かと思います
まだまだ、先の長そうな話ですね
センブリエキスが薄毛治療の主役になるというのは難しいといわざるをえませんが、健胃作用として評価されている血行促進や抗炎症作用というのは頭皮ケアに重要な因子ですし、抗酸化活性というのも頭皮の硬化を防ぐ上で大切です
現時点で主役は無理でもサポート成分としては十分期待できるから、有名な育毛剤には絶対といって良いほど配合されている名脇役なんですね

 

センブリエキスは育毛剤の名脇役!

残念ながら、センブリエキスの現時点の毛乳頭細胞を活性化をはじめとする様々な直接的な育毛効果については、科学的根拠として弱いといわざるを得ないかもしれませんが、血行促進作用や抗炎症作用があることから、育毛剤のサポート成分としては十分期待できると考えられます。
毛髪科学はどんどん進歩していますので、ミノキシジルやキャピキシル、最近では、ミツイシコンブの抽出物であるW-034などと同じように、急に脚光を浴びるということもあるかもしれません。

  • センブリエキスは苦味配糖体を中心とした血行促進作用と抗炎症作用で頭皮環境を改善する
  • 科学的根拠としては弱いながらも、直接的に育毛に関わる因子を活性化する効果も期待できる
  • 今は脇役でも、研究の進展次第では、主役になる可能性が期待される
センブリエキスは育毛剤にとって重要なサポート成分であることがよく分かりました。主役になれるかどうかは今後の研究次第ということも・・・
研究が行われているのかどうかも分かりませんが、利用者にしてみればデータなどはどうでもよく、結果がついてくればそれで充分なので、もしかしたら、直接的な育毛効果もあったらよいのにという程度で配合されているということもあるのかもしれません。血行促進や抗炎症が育毛にとって重要であるということはハッキリしているわけですから・・・!