55歳以上の男性がフィナステリドを飲んでいた場合、悪性度の低い前立腺がんの発症率を下げるという研究報告が、2013年8月にイギリスの医学会の雑誌に発表されました。
ただし、ここでホッと胸を撫ぜ下ろすわけにはいきません。悪性度の高い前立腺がんについては発症リスクが上がっており、死亡率はプラセボ群(偽薬を使用して実験)とほぼ同率だったという結果になっています。

最初に断っておきますが、この研究報告は、前立腺肥大症の治療薬プロスカー(成分:フィナステリド5mg)についての研究報告です。
日本で使用されているプロペシアの成分フィナステリドは1mgで、研究報告されたフィナステリドの約1/5の濃度ということになります。

ちなみに、日本ではフィナステリドについて、前立腺肥大・前立腺がん治療薬の使用は認可されていません。
とはいえ、プロペシアを飲んでいる人、飲んでいなくても関心を寄せている人にとっては、このフィナステリドの研究報告は非常に気になることでしょう。

そして最後のほうでザガーロと前立腺がんの関係についても解説いたします。

参照URL:NCBI「Long-term survival of participants in the prostate cancer prevention trial.」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23944298

フィナステリドの添付文書の一部、書き換えを命じたFDA

悪性度の低い前立腺がんの発症リスクは抑え、悪性度の高い前立腺がんの発症リスクを高めるという何とも理不尽な研究結果はアメリカのFDAもカナダの保健省も認めており、フィナステリドが5mg入った前立腺肥大症治療薬「プロスカー」などの添付文書にもそれらについて書き換えるように命じたと言われています。
また、プロペシアの添付文書にもこのような研究報告が掲載されています。

濃度が違う研究結果がプロペシアに当てはめるのは難しいけど、知っておいてほしい情報

プロペシアのフィナステリドは0.2mgと1mgではあり、フィナステリド5mgで得られた実験結果をそのまま平行移動して考えるわけにはいきません。

5mgではなく1mgだからと安心するのも早計です。さらに研究が進めば、「1mg」でも何らかの影響が出るとも限りません。

同じ成分でも濃度が変われば、人体にどのように影響するのかを知っておくことも大切なことです。

参照URL:メドレー「プロペシア1mg・添付文書 使用上の注意:臨床検査結果に及ぼす影響」
https://medley.life/medicine/item/249900XF2079/docs

怖いのはAGA治療のために個人の判断でフィナステリド5mgを使用すること

現在、アメリカなどではフィナステリド5mgの製品「プロスカー」などが前立腺肥大症の治療薬として販売されています。
日本の病院でもらうプロペシアの効果がない、あるいは病院に行く時間がないからとフィナステリド5mg製剤を個人輸入で入手する人がいます。

個人輸入ということが皆さんの頭に過ったとき、このような記事を思い出していただければ嬉しいなと思っています。

そして、もう一つ、フィナステリドを飲むAGAの人たちに知っていただきたいことがあります。
それはフィナステリドを飲んでいると、ある検査値が正しく測定できないのです。

その検査値とは前立腺がんの検査でよく行われているPSA値を測定する検査のことです。
PSA検査については後程わかりやすく簡潔に説明しますので、ここでは「フィナステリドを飲んでいると、前立腺がんの検査数値が正しく反映されない」ということだけ、知っておいてくささい。

フィナステリドを飲んでいると、前立腺がん発症時期を見逃がす危険があり!

プロペシアの添付文書にもはっきりと明確にこのことが記載されていますが、フィナステリドを飲んでいる人はPSA検査の際、PSA数値を2倍に換算することが必要であるということです。

PSA検査のときは必ずプロペシアを飲んでいることを医師に伝えましょう

プロペシアを飲んでいる間は、PSA値が半分に減少することがよく知られています。
AGA治療薬としてフィナステリドを有効成分とするプロペシアが市場に登場して以来、医師はPSA値を測定するときには患者さんにはプロペシア服用の有無を尋ねるようにしてはいます。

もし、尋ねられなかったら、プロペシアを飲んでいる人は、忘れずにそのことを医師に伝えましょう。
伝えなかったら、前立腺がんであっても、「異常なし」という結果になってしまう場合もあります。

PSAとは

PSAは「prostate-specific antigen」の略です。日本語では「前立腺特異抗原」と訳します。
前立腺上皮細胞から精液中に分泌されるたん白質で、前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺炎を発症すると血中濃度が高くなります。
特に、PSA値が4ng/ml付近で、被験者の約3割に前立腺がんが発見されると考えられています。

参考URL:日本泌尿器科学会「PSAが高いと言われた」
https://www.urol.or.jp/public/symptom/08.html

ノコギリヤシはPSA値に影響を与えない

フィナステリドと同じように5α-リダクターゼを阻害するノコギリヤシというハーブの成分があります。チャップアップやボストンなどの育毛サプリに入っています。
フィナステリドがPSA値に影響を与えるのであれば、同じ働きをもつノコギリヤシもPSA値に影響を与えてしまうのではと考えてしまいます。


しかし、前立腺肥大に効果があると考えられているノコギリヤシは、PSA値に影響を与えることはないという研究報告がありました。アメリカからの報告です。

参考URL:潮江太陽クリニック「ノコギリヤシはPSA値に影響しない 」
http://www.taiyou-clinic.jp/blog/archives/1134

若い世代(35~44歳)の進行性前立腺がんは、高齢の前立腺がんよりも生存期間が短い!

前述したように、「フィナステリドを飲んでいると、進行の遅い前立腺がんの発症率は下げる、悪性度の高い前立腺がんは進行させる」という内容が2013年ごろに発表されましたが、それよりも先、2009年にアメリカのがん協会が発行する「CANSER」に興味深い記事が掲載されました。

それは、「高齢の前立腺がん患者よりも若い進行性前立腺がん患者の生存期間のほうが短い」という内容です。
これはワシントン大学からの研究報告で、AGA治療薬などとの関連性は書いてありません。
前立腺がんは、50代から急激に増える疾患です。
ワシントン大学の研究者は、年齢の影響を受ける前立腺がんの予後を調べました。
前立腺がんと診断された時点での年齢と、その時の健康状態からどれだけ治療などによって回復するかといった調査を行いました。
若くして前立腺がんになった場合でも進行の遅いものであれば治療後は高齢者よりも10年は永く生きているケースが多いのに、悪性度が強い前立腺がんであった場合、高齢者と比べ生存期間が短いという結果が出たと発表しました。

フィナステリドを飲む高齢者と飲まない若い世代と比較して

少し、今までの内容を大きくまとめてみますね。
① フィナステリドを飲んでいる55歳以上の男性の場合、悪性度の低いがんにはなりにくい、逆に悪性度の高い前立せんがんの発症リスクは上がりやすい。

② 35~44歳という若い世代において(プロペシアを飲んでいない)は、悪性度の低い前立腺がんはなりにくい、なっても治療しやすい、逆に進行性の場合、高齢者よりも若い世代のほうが生存率は下がる。
上記のことから、フィナステリドの存在があった場合の55歳以上の前立腺がんの状況と、フィナステリドを飲まない若い世代の前立腺がんの状況は類似していることになります。

これはどういうふうに解釈すればいいのでしょうか?
私見ですが、若い世代は、通常であれば高齢者と比べてDHT(ジヒドロテストロン)が多くありません。そして、高齢者がフィナステリドを飲んでいる場合、飲まない高齢者と比べDHTが減っています。
要するに、通常の若い世代とフィナステリドを飲む高齢者の男性ホルモンの状態が非常に類似していることが、これらの研究報告からも理解できます。

したがって、これも私見ですが、AGAの観点から考えると、やはり、フィナステリドはAGAに対してそれなりに効果があるのかと考えます。
何故なら、フィナステリドは若い人がもつテストステロン(男性ホルモン)の状況に似せようとしていることがこれらの研究でもわかったわけですから……。

参考URL:日経メディカル「進行性前立腺癌の若い男性患者は高齢の男性患者より生存期間が短い」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200905/510890.html

ザガーロと前立腺がんの関係

ザガーロはプロペシアよりもかなり遅れて、2015年9月に認可、2016年6月に販売されたAGA治療薬です。

ザガーロもプロペシアと同様、5αリダクターゼの活性を抑える薬です。

ザガーロはプロペシアよりも強力な効果!

プロペシアとザガーロの効能は同じですが、プロペシアは5α-リダクターゼのⅡ型のみ、ザガーロはⅠ型・Ⅱ型、両方の活性を抑えます。
その分、プロペシアよりもザガーロの作用のほうが強力ということになります。
ちなみに、ザガーロもプロペシア同様、前立腺肥大の治療薬です。
ザガーロの成分「デュタステリド」は、前立腺治療薬「アポルブカプセル」として日本の市場に出ています。

ザガーロは0.1mgと0.5mgが販売されていますが、0.5mgが主流に流通しています。

副作用は当然、ザガーロのほうが強い

近年の医学薬学の研究成果、製剤技術の発展などで作用が強いほうが必ずしも副作用も強いとは言えなくなっていますが、プロペシアとザガーロでは作用の強いザガーロのほうが副作用が強い言われています。

ザガーロも前立腺がんがあってもPSA値を下げる

プロペシアの成分「フィナステリド」と同じように、ザガーロの成分「デュタステリド」もPSA値を下げます。
ザガーロを約6か月飲み続けると、たとえ前立腺がんを発症していたとしても、PSA値が下がってしまいます。
そのため、プロペシア同様、PSA値を測定したときは倍にしてから基準値と比較をし、判定する必要があります。
従って、ザガーロを服用中と医師に申し出て、正確な判定をしてもらいます。

参考;ザガーロ添付文書

AGA治療薬が前立腺に影響を与える薬だけに、前立腺がんなども関連して考えることもあるでしょう。
まだまだこのあたりの研究は未明な部分も多く、これからも二転三転することが考えられます。
しっかりとその動向を見つめ、自分の考えをそれに上乗せして、自分の育毛対策に役立ていきましょう。