白髪と薄毛は老化を象徴する外観の一つですが、男性の場合は薄毛というよりかハゲが忌み嫌われる傾向にあり、「はげるくらいなら白髪の方がまし!」ろ思っている人も少なくはありません。昔から、白髪になる人は禿げないといわれることもありますが、それは果たして正しいのでしょうか?今回は白髪と薄毛の関係性について、最近の研究成果を踏まえて検証したいと思います

男性・女性に関係なく、歳をとると白髪が目立つようになりますが、近年では白髪染めも手軽になり自宅で簡単にできますし、いっそのことカラーリングで気に入った色に染めるお洒落な人も居られます。
一方、老化に伴い髪の毛が薄くなり、上から見ると地肌が見えるようになってくる薄毛という毛髪の悩みを抱える人も増えてきます。

男性の場合には、薄毛になるくらいなら白髪の方がましと考える人が多く、「白髪になる人ははげない」と思い込んでいる人がほとんどのように感じられます。
ちなみに、女性の場合は男性のように老化によってはげるということはありませんが、髪の毛のボリュームが無くなることや白髪が増えることを憂いている女性も居られます。

男性の毛髪に関する最大の悩みといっても過言ではない額のM字や頭頂部がはげてくる男性脱毛症(AGA)も老化の一種ではありますが、AGAについては多くの研究成果が報告されています。
すべてが判明しているわけではないかもしれませんが、メカニズムの解明や発症を抑えるための成分や方法も解明されつつあり、AGAに対する治療薬であるプロペシアサガーロが発売されていますし、メカニズムに合わせた育毛剤も多数市販されています。

ところが、男性型脱毛症や円形脱毛症などの脱毛症と呼ばれる病気とは別に特に目立った病気や薬の副作用などがないにも拘わらず起こる老化に伴う白髪や薄毛というのは、「歳をとれば仕方のないもの!」、「誰もが通る道!」とあきらめられているようなところもあり、メカニズムも対策も定かではないという時代が長く続いております。

いずれにしても、白髪や薄毛は老化現象の一つであることは間違いありませんが、メカニズムが分かれば髪の毛のアンチエイジングとして白髪や薄毛を抑制する、あるいは、進行を遅らせることも不可能ではないという時代が来るということもやぶさかではありません。

このような背景のもと、近年、東京医科歯科大学・難治疾患研究所・幹細胞医学分野の西村栄美教授らの研究グループによる加齢に伴う白髪や薄毛の原因について報告され、17型コラーゲンという物質の注目度が急上昇しています。

白髪になる人ははげないと思っていましたが、そうではないのですか? あと、白髪を抜くと白髪が増えるとか生えなくなるというのも聞いたことがありますが・・・
それらの話は髪の毛が成長するメカニズムが分かっていないころ頃から言い伝えられているだけで、科学的な根拠があるわけではありません
ということは、白髪と薄毛が同時進行する可能性もあるということでしょうか?
それについては毛髪が伸長する仕組みを知ることで分かると思いますが、白髪と脱毛の関係を科学的に解明したというのが東京医科歯科大学の西村栄美教授らの研究グループの研究成果です
それは、なかなか興味深いお話ですね
先ずは、髪の毛ができる仕組みについて考えてみましょう

 

髪の毛が伸びるメカニズムとは?

髪の毛は毛包内の一番下の基部にある毛乳頭という組織の表面に存在する毛毛母細胞とメラノサイトによって産生されています。
毛乳頭は結合組織の中を毛細血管が通っており、毛母細胞やメラノサイトに分裂したりメラニン色素を合成するための栄養素を供給します。

  • 毛母細胞:分裂の速い細胞で、分裂して先にできている毛髪につながり上に押し上げることで毛髪を伸長させる細胞です。上に押し上げられるに従って角化してケラチンを主成分とした毛髪に変化していきます。
  • メラノサイト:髪の毛に色を付けるためのメラニン色素を分泌する細胞で、伸長していく毛髪の中にメラニン色素を混入していくことになります。

毛乳頭の表面に毛母細胞とメラノサイトが並ぶ領域は毛母体と呼ばれますが、毛母体のメラノサイトが機能しなくなると髪の毛にメラニン色素を供給できない、すなわち、白髪になります。
白髪の場合、毛髪そのものは伸長しているわけですから、メラニンを合成するための栄養素が不足しているということは考え難く、メラノサイトそのものが減少、あるいは、存在していないと考える方が妥当かと思われます。

ここまでは、結構古くから分かっていることであり、毛母体に入る細胞数が決まっていて加齢にともなうメラノサイトのが減少に応じて毛母細胞が増加すると仮定するならば、「白髪になる人ははげない」ということが正しいということになりますが、そんなに単純なものではないというのが西村栄美教授らの研究成果で分かった白髪と薄毛の関係性です。

参照元:ウィッキペディア 毛包
https://ja.wikipedia.org/wiki/毛包

ちなみに、「白髪を抜くと白髪が増える」というのは間違った言い伝えで、、白髪が増えるのは白髪ができやすい状態になっているからであって、抜いたことは関係しません。
「白髪を抜くと髪の毛が生えなくなる」というのは、抜いたときに毛乳頭を傷つけてしまった場合には起こる可能性が無いとは言えませんが、毛乳頭があり毛母細胞が供給される限り生えなくなるということはありません。

髪の毛が伸びるメカニズムからすると、毛母細胞が元気でメラノサイトが減ってくれば白髪になるし、毛母細胞とメラノサイトの両方が減ってくれば白髪と薄毛が同時に起こってくるということですね
そういうことです。毛母細胞とメラノサイトは毛乳頭の表面に同居しているといえども別々の細胞ですので、白髪と薄毛というのは独立した現象です。しかし、それは毛乳頭の表面で起こる毛母細胞とメラノサイトの活動に関する話です
話が見えてこないのですが・・・?
毛母細胞やメラノサイトは別のものですが、それらを産み出すもとになる幹細胞と呼ばれるレベルでは、両者の間には関係があったというのが西村栄美教授らの研究グループの研究成果です
白髪と薄毛は別々の現象に見えて、実は、おおもとでつながっているということですね

 

髪の毛の老化のカギを握る毛包幹細胞と色素幹細胞

毛乳頭に毛母細胞を供給するためのもとになる細胞が毛包幹細胞と呼ばれる幹細胞で、メラノサイトを供給する素となる細胞が色素幹細胞という幹細胞であり、幹細胞が性質を維持する、すなわち、毛包幹細胞や色素幹細胞がそれぞれ毛母細胞やメラノサイトになるためには幹細胞を維持するための特殊な環境が必要です。

健全な髪の毛を伸長するために必要な毛母細胞やメラノサイトを産み出すための幹細胞は、毛包の外側の中ほどにある膨らんでいる部分のバルジ(毛隆起)領域と呼ばれる場所に存在しており、健全な髪の毛を生む出すためにはバルジ領域が幹細胞を維持するための環境が整っている必要があるというわけです。

逆に、バルジ領域の環境が乱れてしまうと色素幹細胞が維持されなくなりメラノサイトが減少することで毛髪の色が薄くなり、やがては、白髪になってしまいます。
さらに、バルジ領域の環境の乱れによって毛包幹細胞から毛母細胞が供給されなくなり、髪の毛を生産することも出来なくなってしまいます。

ヘアサイクルに合わせて毛包は伸びたり縮んだりしますが、髪の毛が退行期・休止期に入ると毛包が皮膚の表面に向かってせり上がり、毛乳頭がバルジ領域に接近した際に毛包幹細胞と色素幹細胞が分化した毛母細胞とメラノサイトが毛乳頭に供給されることで、新たな髪の毛が生産されることになります。

東京医科歯科大学の西村栄美教授らの研究グループでは、毛包幹細胞の機能について調べた上で、毛包幹細胞と色素幹細胞の関係について調査することによって、加齢に伴う白髪や若白髪のメカニズムを明らかにするとともに、加齢によって毛包幹細胞が維持できなくなることで薄毛が進行するメカニズムを解明したということです。

そして、毛髪の老化に関する研究成果のキーとなっているのが、17型コラーゲンと呼ばれるたんぱく質というわけです。

何だか難しそうですが、東京医科歯科大学の西村栄美教授ら研究内容を把握する必要がありそうです
医学系の教授の研究ですので難しい内容も多いのですが、出来る限り簡単に解説できるように頑張ります
よろしくお願いします

 

17型コラーゲンは加齢による白髪と脱毛を抑える!

今回の研究が報告されるまでは、17型コラーゲンは細胞膜を貫通するような形で上皮細胞に存在しており、上皮細胞が基底膜に接着するための接着剤のような働きをすることが知られているたんぱく質です。

東京医科歯科大学の西村栄美教授らの研究グループの研究成果が2011年2月にCell Stem Cellという国際科学誌に掲載され、その内容が以下のようにプレスリリースされています。

  • 毛包幹細胞が17型コラーゲンを高レベルで発現
  • 17型コラーゲンは毛包幹細胞の幹細胞性を維持する
  • 毛包幹細胞が色素幹細胞のニッチ細胞として機能

言い換えるならば、毛包幹細胞には17型コラーゲンを生産する能力があり、17型コラーゲンが存在することによって毛包幹細胞が存在するバルジ領域の基底膜に結合して幹細胞としての機能を維持できるということです。
さらに、毛包幹細胞における17型コラーゲンの存在は、バルジ領域内に毛包幹細胞と共存している色素幹細胞を幹細胞として機能させるためにも働いているということが解明されました。

西村栄美教授らの説明によると、毛包幹細胞にはTGF-βという成長因子を分泌してバルジ領域内で隣接する色素幹細胞がメラノサイトになるをの抑える働きがあり、17型コラーゲンを造ることができない毛包幹細胞ではTGF-βの分泌が消失するために色素幹細胞が維持できなくなるということです。

TGF-βというのは毛母細胞や幹細胞の分裂・分化を抑制するトランスフォーミング増殖因子と呼ばれる物質で、男性型脱毛症(AGA)においては毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体にジヒドロテストステロンが結合した際に分泌されて、毛母細胞の分裂を抑制することで毛髪の伸長を止めてしまう物質でもあります。

話がそれましたが、加齢に伴う代謝能力の低下によって17型コラーゲンの生産は低下しますので、歳をとれば白髪が増えてくるということになります。
ところが、何らかの原因で17型コラーゲンが生産されなくなると色素幹細胞にTGF-βが供給されなくなり、年齢に関係なく白髪が増える、いわゆる、若白髪という状態になってしまいます。

参照元:ウィッキペディア XVII型コラーゲン α1、
https://ja.wikipedia.org/wiki/XVII型コラーゲン_α1
参照元:国立大学法人 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 研究成果・プレスリリース 「毛包幹細胞が色素幹細胞を維持する仕組みを解明」
http://www.tmd.ac.jp/mri/press/press11/
参照元:Cell Stem Cell ”Hair Follicle Stem Cells Provide a Functional Niche for Melanocyte Stem Cells”
https://www.cell.com/cell-stem-cell/abstract/S1934-5909(10)00651-X

髪の毛の繊維をつくる細胞が髪の毛の色素をつくる細胞を支えるのに働いているということですね。ということは、白髪が増え始めると薄毛が始まる前兆ということになるのでしょうか?
毛乳頭の表面にメラノサイト供給できなくなった状態、すなわち、色素幹細胞が機能していない状態が白髪ですので、色素幹細胞が機能しない原因が毛包幹細胞の減少にあるのであれば、白髪と薄毛が同時進行するのではないかと推測されます
抜け毛が増えていないようならまだましですから 、白髪が増えてきたときには抜け毛のチェックもした方が良さそうですね
加齢に伴う抜け毛の増加については、2016年に同グループから発表された次のステップの研究成果によって解明されています

 

17型コラーゲンをつくれなくなったもう毛包幹細胞はどうなるのか?

2011年に発表された論文によって、毛包幹細胞と色素幹細胞の相互関係が明らかにされましたが、2016年にScienceという国際科学誌に発表された論文では、17型コラーゲンを生産できなくなった毛包幹細胞がどのような運命をたどり、そのことが脱毛にどのように関係するのかということが明らかにされました。

解明された老化による脱毛メカニズム

  • 毛包幹細胞はヘアサイクルの休止期に分裂して毛母細胞を毛乳頭に供給しますが、分裂する際に起こる遺伝子の傷によって17型コラーゲンの分解が進んでしまうことがあります。
  • 加齢に伴い遺伝子の修復が遅れるようになり、17型コラーゲンを失った、すなわち、幹細胞としての機能が維持できなくなった毛包幹細胞が増えてきます。
  • 幹細胞として働けなくなった毛包幹細胞は皮膚の角質細胞(角化細胞)と同じようにフケや垢となって、皮膚の表面から離脱する。
  • ヘアサイクルに合わせた毛包幹細胞の減少に伴いバルジ領域だけでなく毛包自体が徐々に小さくなる。
  • ヘアサイクルごとに新たに生えてくる毛が細くなってきて、やがては、生えなくなってしまう

簡単に言えば、

  1. 加齢とともに髪の毛をつくる毛母細胞を供給する毛包幹細胞が正常に分裂できなくなる
  2. アブノーマルな毛包幹細胞がフケや垢として離脱
  3. 毛包自体がヘアサイクルごとに小さくなる(毛包のミニチュア化
  4. 髪の毛が細くなり、最終的には、生えてくる髪の毛が無くなってしまう

といった感じで、老化に伴う薄毛やハゲが進行するということになります。

毛包のミニチュア化という現象はAGAにおいて起こる特徴的な症状と考えられていましたが、老化によって起こるということが確認されたというわけです。

参照元:国立大学法人 東京医科歯科大学 プレスリリース 「歳をとると毛が薄くなる仕組みを解明」【西村栄美 教授】
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20160205/index.html
参照元:Science ”Hair follicle aging is driven by transepidermal elimination of stem cells via COL17A1 proteolysis”
http://science.sciencemag.org/content/351/6273/aad4395

毛包が小さくなるのはAGAのためではなくて、老化によって17型コラーゲンがつくられなくなることが原因ということですか?
AGAはDHTが男性ホルモン受容体に結合することでTGF-β1を分泌し毛乳頭表面にある毛母細胞の細胞死を誘導することによって毛髪が成長できなくなることで起こるだけで、毛包幹細胞が維持されていれば毛包のミニチュア化が起こるわけではないということかと思います
でも、毛包幹細胞が維持できて毛母細胞を供給したとしても、DHTの生産を抑えない限りはAGAが回復するということは無いということですよね
そういうことになると思います。しかし、毛包がミニチュア化してしまっては二度と毛が生えることがありませんので、毛包幹細胞が17型コラーゲンを正常につくることができるかぎりはAGAも治療できる余地があるということになります
俗的に言われるところの「毛穴が生きている」ということが、17型コラーゲンが生産できるということにつながるというわけですね
AGAの治療はDHTの生産を抑えることが大切ですが、血流を改善するような成分や分裂を促進するような成分を配合した育毛剤を使用することも毛包幹細胞を維持する上で重要になってくるという可能性もあります。毛包幹細胞が正常に維持されていれば、色素幹細胞が維持されることになり老化による白髪も防げそうです
17型コラーゲンを直接増やす方法はないのですか?

 

17型コラーゲンを増やす方法やサプリはあるのでしょうか?

西村栄美教授らの研究では、毛髪の老化現象において17型コラーゲンが如何に大切であるのかということを動物実験によって検証しています。

  • 17型コラーゲンをつくる遺伝子が脱落した、すなわち、17型コラーゲンをつくることができないマウスでは、毛包幹細胞におけるTGF−βの産生もなくなり、隣接する色素幹細胞も維持できなくなることで若白髪になる。
  • 若白髪になったマウスにおいて、毛包幹細胞の17型コラーゲンをつくることができるようにすると、白髪や毛包のミニチュア化を抑制できる。

一連の実験結果から言えることは、老化に伴う白髪や脱毛は17型コラーゲンが減少しないようにすることが大切ということになります。

ところが、17型コラーゲンは毛包幹細胞の細胞膜を貫くように存在しているコラーゲンですので、他のコラーゲンのように外部から注入するような方法では何の役にも立ちません。
現在も、毛包幹細胞が細胞内に17型コラーゲンを維持するようにするための薬や治療方法の研究が続けられているということです。
言い換えるならば、現時点では、毛髪の老化を抑えるキーとなる17型コラーゲンを維持する方法は見出されておらず、今後の研究成果に期待されるということになります。

参照元:アデランス ホームページ アデランスの研究開発 「毛をつくる幹細胞を維持する17型コラーゲンの役割を解明した」
https://www.aderans.co.jp/corporate/rd/case/hair_restoration18.html

髪の毛の老化を抑える方法は今後の研究次第ということですが、メカニズムが分かったというだけでも朗報です
そうですね。Scienceに掲載されるという段階で研究としてのレベルも高いわけですし、17型コラーゲンが注目されることで研究の進展も早くなるかもしれません
様々な脱毛症の治療や育毛剤による進行の抑制というのも毛穴が機能しているからこそできることですから、早く何とかなってほしいものです
今回のお話は、あくまで、老化に伴う白髪と脱毛のお話ですので、老化以外の原因で起こる白髪や抜け毛というのは毛髪の老化が進む前にケアしていく方が良いのかもしれません
それにしても、人の体に必要な細胞を供給する幹細胞については分かっていないこともたくさんあるということは良くわかりました
西村栄美教授の研究グループでは、毛包幹細胞と色素幹細胞に関する研究による今回の結果によって、他の組織や臓器における加齢関連疾患の治療や予防に発展することが期待できるということです
アンチエイジングはサプリ関係でも重要視されているようですし、注目度も高い分野ですから期待も大きいでしょう

ちなみに、毛包幹細胞は機能しているにもかかわらず色素幹細胞が機能していない状態である若白髪については、当サイトでも以下の記事で解説しています。老化以外の白髪を引き起こす原因はあるようです。

関連記事:若白髪を防ぐ対策がある?バルジ領域から考える若白髪になる主な原因