

男性の薄毛の代表格である男性型脱毛症(AGA)は男性ホルモンであるテストステロンの減少によって発生するジヒドロテストステロン(DHT)が毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体に結合することによって起こる抜け毛ですが、歳をとれば男性ホルモンが低下するから仕方がない、遺伝だからとあきらめている人もおられるかもしれません。
しかしながら、抜け毛の原因はAGAだけではなく、生活習慣、栄養状態、睡眠時間などが原因で、髪の毛が成長する栄養素が不足することで進行する抜け毛もありますし、遺伝や加齢だから仕方が無いと思っているはずのAGAでも、生活習慣によって進行を遅らせることができると言われています。
抜け毛の進行を抑える生活習慣といってもいろいろありますが、腸内環境の整備も一つの手段です。
お肌のシワ・たるみや乾燥肌などの肌荒れの原因の一つが腸内環境にあり、美容と健康のために乳酸菌や食物繊維を摂って腸内環境の整備を心掛けているという女性は多いようですが、肌荒れをあまり意識しない男性は腸内環境を整備することの重要性を意識する人は少ないようです。
育毛剤や育毛シャンプーにスカルプケアという名称がついていることからも分かるように、抜け毛の予防や育毛において頭皮環境の整備は重要ですが、腸内環境の影響を受けてお肌の延長上にある頭皮も悪化することで起こる抜け毛もあります。
また、腸内環境の悪化がメタボリックシンドロームを誘引し、脂質異常症により血液がドロドロになり、髪の毛に必要な栄養素が毛乳頭細胞に届けられにくくなるということもあります。
さらに、欠乏症によって抜け毛を誘発するビオチンの生産やDHTの合成に関与する5αリダクターゼの働きを抑えるエクオールという物質の生産にも腸内細菌が関与しているということで、腸内環境を整備することには、様々な方向から、抜け毛の進行を抑える効果が期待できます。




目次
腸は栄養素の吸収と老廃物の排出を担う重要な存在!
髪の毛の成長を担う毛母細胞は分裂・増殖が速く、それを維持するためには十分なエネルギーと質の高い栄養素を必要とします。
毛乳頭表面に存在する毛母細胞に栄養素を届けるためには、食事で摂取された栄養素を代謝するためのビタミンやミネラルも重要ですが、その前に、栄養素を吸収する腸が機能していることと栄養素の運び手である血液が素早く流れていることが重要です。
食事で摂取された食材が消化液や酵素によって適度に分解されながら腸内を移動する間に腸から吸収されますので、腸管そのものが健全である必要があります。
ところが、腸内環境が悪化する、すなわち、善玉菌が減って悪玉菌が優勢になっているような腸内菌叢が形成されている状態では、悪玉菌が造る有害物質によって腸の活動が鈍くなってしまうことがあります。
また、腸の活動が鈍くなると、栄養素の吸収が鈍くなるだけでなく、体内の老廃物の排出が滞ることによって本来排出されるはずの体内で不要になった脂質が再吸収されることによって血液中の脂質が増加し、血液がドロドロになって血流が悪化する可能性もあります。
すなわち、腸内環境の悪化によって、髪の毛に必要な栄養素が少ない上に、毛乳頭まで移動させる速度が低下してしまう状況になり、毛髪の成長がままならなくなり成長途上で太くなれずに抜けてしまうというヘアサイクルの乱れが生じてしまうというわけです。
そして、腸内環境の乱れを引き起こしているのが悪玉菌と呼ばれる腸内細菌群です。






腸内細菌のバランスのカギを握るのは日和見菌!?
腸内には3万種類もの腸内細菌が棲んでいるという話がありますが、その内訳は、2割の善玉菌と1割の悪玉菌と残りは状況によって善玉菌にも悪玉菌にもなる日和見菌と呼ばれる菌です。
- 善玉菌:乳酸菌やビフイズス菌などの腸内環境を酸性に傾けることで悪玉菌の増殖を抑えることで身体にとって有害な物質を排除し、腸の活動を活発にする細菌群です。
- 悪玉菌:ウェルシュ菌に代表されるクロストリジウム属 (Clostridium) や大腸菌(病原性)などで、この細菌群が優勢になることによって腐敗物質や有毒物質の増加だけでなく、発がん物質が生産されることもあります。
- 日和見菌:非病原性の大腸菌やクロストリジウム、バクテロイデスなどが該当し、悪玉菌が抑えられた状態では善玉菌として働きますが、悪玉菌が優勢になると悪玉菌として働く細菌群です。
腸内細菌としては嫌われる悪玉菌ですが、悪玉菌に加勢している日和見菌の中には人の健康に役立つビタミンB群やビタミンKを生産する細菌もいますし、食物繊維の消化・代謝を助ける細菌もいます。
分解された食物繊維は短鎖脂肪酸に代謝され大腸が活動するためのエネルギーとして作用することも知られています。
一方、善玉菌と呼ばれる乳酸菌の中には、ビオチン要求性、すなわち、増殖するためにビオチンを消費する乳酸菌がいて、ビオチン欠乏症による抜け毛を促進する可能性のある乳酸菌も存在します。
言い換えるならば、善玉菌である乳酸菌を適度に摂取して合成される乳酸などの酸によって悪玉菌の増殖を抑えて日和見菌を味方につけることが抜け毛だけでなく美容と健康のためには大切ですが、乳酸菌の種類によっては腸内で増えすぎるとビオチン欠乏症による抜け毛が起こる可能性もあるというわけです。


抜け毛改善の助っ人、ビオチンを腸内で増やそう!
ビオチンはビタミンB7とかビタミンHなどと呼ばれたいたこともある水溶性ビタミンであるビタミンB群の仲間です。
ビオチンはアミノ酸の代謝や脂質の分解を促す働きのあるビタミンで、不足すると、白髪、抜け毛、湿疹、皮膚炎などの皮膚症状が目立つことが知られています。
また、コラーゲンやセラミドのたんぱく質や脂質の合成を促進する働きもありますので、頭皮の弾力性や保湿性といった育毛のためのスカルプケアにも重要な働きがあると考えられます。
ビオチンは食事で摂ることが可能ですし、腸内細菌が合成することも知られており、通常はビオチン欠乏症になるということは滅多にありません。
特に、腸内細菌のつくるビオチンは反応性が高く、ビオチン産性能の高い腸内細菌を増やすことは抜け毛予防に大切になってきます。
ところが、一部の乳酸菌にはビオチンを取り込んで増殖に利用する乳酸菌も存在し、善玉菌であるはずの乳酸菌が悪玉菌を抑えながらもビオチンを消費してしまうことで抜け毛が進行するという可能性もあるというわけです。
もちろん、ビオチンを生産する善玉菌もいますが、エンテロコッカス・フェカリス、ラクトバチルス・ムリナス、ラクトバチルス・プランタラム、ビフィズス菌JBL01などはビオチンを消費する代表的な善玉菌です。
近年では、エンテロコッカス・フェカリスはプレバイオティクス、バイオジェニックスを代表する乳酸菌として知られている乳酸菌であり、サプリメントなどで使用されているものは死菌であり、摂取しても抜け毛の心配はなさそうです。
しかしながら、ビフィズス菌などは厳密にチェックしているわけではなく、過剰に摂取することが無いように注意した方が良さそうです。
参照元:菌活・腸活ラボ ビオチン(腸内で作られるビタミン)と乳酸菌の関係
http://lvw.co.jp/nyusankin_lab/column/ビオチン%ef%bc%88腸内で作られるビタミン%ef%bc%89と乳酸菌の
参照元:ウィッキペディア ビオチン
https://ja.wikipedia.org/wiki/ビオチン
参照元:わかさの秘密 ビオチン
http://www.wakasanohimitsu.jp/seibun/biotin/




腸内フローラが作るエクオールに抜け毛予防効果はあるのか?
エクオールは別名「スーパーイソフラボン」とも呼ばれる、女性ホルモン様物質として有名なイソフラボンの仲間です。
ホルモンバランスの乱れから発生する女性の抜け毛に対して効果が期待されるイソフラボンですので、化学構造が似ているエクオールも同様の効果が期待できるというわけですが、エクオールはAGAの原因となるDHTの合成を抑える効果があると考えている人もおられるようです。
実際のところ、エクオールのAGAに対する効果の科学的な証明はなされていないようですが、イソフラボンの摂取により血液中のDHTが減少したという実験結果もあるということで、イソフラボンと構造が類似しているエクオールにも同様の効果を期待するという程度のようです。
医学関係の論文をサーチできるPubMedで「isoflavon」+「alopecia(脱毛症)」で検索しても論文の確認ができなかったので、論文公開されていないデータと考えた方が良さそうです
エクオールを作れる人と作れない人が!
エクオールは、大豆あるいは大豆加工食品などに豊富に含まれるダイゼインというイソフラボンの一種から腸内細菌によって合成される物質です。
大塚製薬がエクエルという商品名で展開している「女性を支えるパワーの源」として期待の商品の主成分がエクオールという物質ですが、大豆加工品を食べたときに腸内でエクオールに変換できる人は日本人で約半分、欧米では2~3割程度といわれています。
エクオールを生産できる腸内細菌は現時点で21種類確認されているということですが、その中には、ビフィズス菌やラクトバシルス属(乳酸桿菌)も含まれており、エクオールの生産には善玉菌が大きく関与していると推測されます。
参照元:ウィッキペディア エクオール
https://ja.wikipedia.org/wiki/エクオール






コメント