抜け毛は、枕についていたり、肩に落ちていたりと、どちらかいうと、迷惑な存在です。
特に、食に関わる仕事をされている方にとっては、忌まわしい存在に違いありません。
いつもは役立たずでちょっと迷惑な抜け毛ですが、そんな抜け毛でもしっかりと役に立ってくれるときもあります。
実は、頭部周辺に何か異常事態が発生しているときには、何もない健常なときと比べると抜け毛の毛根側に変化がみられるわけですが、萎縮毛もその変化の一つです。

まずは、自然に抜けていく正常な抜け毛と異常な抜け方をする毛の違いは、どこにあるのかを検証してみます。
その違いを把握したあと、萎縮毛のような異常な抜け毛が発生すえう理由を探ってみます。

 

萎縮毛と正常な髪の毛の違い

異常な毛と正常な毛の違いを把握することで、異常な毛(萎縮毛)が非常事態にあることがわかります。

その違いは、発毛を促す重要な細胞などがぎっしりと詰まっている毛根部にあります。

 

正常な毛根部

正常な毛根部は、マッチ棒とか綿棒などの上部の形に似ています。

そのふっくらとした抜け毛の根元の部分に、発毛に必要な毛母細胞や毛乳頭などが含まれています。
このしっかりと膨らんだ部分は、ヘアサイクルを正しく循環して、すなわち、しっかりと成長した後に自然に抜けていったということを示しています。

※ヘアサイクル:毛周期ともいう。髪の毛は成長期⇒退行期⇒休止期という周期で発毛、脱毛(抜け毛)を繰り返しています。毛根部分(毛包)がふっくらと大きい抜け毛は成長期が長く、その間に太くて丈夫な髪に育つことができたという証でもあります。

 

萎縮毛は異常な毛根部の代表例

萎縮毛といわれる異常な毛根部は、萎縮という言葉通り、ふっくらとして綿棒の頭のような毛根部ではなく縮こまって先細った形をしています。
このように痩せて萎縮した毛根部を持った髪の毛は、短かったり、細かったりと、充分な成長期間がなかったことを示しています。

では、枕や肩に貼り付いていた抜け毛が萎縮毛だった場合、髪の毛に何が起きていると想定できるのでしょうか?

 

萎縮毛になるのはどんなとき?

発毛が始まりぐんぐん伸びて太くなっている成長期に、何らかの影響で急に毛母細胞の分裂がストップしてしまうときに毛が抜け落ちていきます。
そのときの毛は、充分に成長できていない証として毛根部分が痩せて細くなっています。これが萎縮毛です。
このように、成長期の途中で髪が抜ける病気を「成長期毛性脱毛症」といいます。
抗がん剤投与の副作用による激しい脱毛や円形脱毛症などがこの部類になります。

脱毛症には「休止期毛性脱毛症」という病気もあります。

正常な自然脱毛と同じ休止期に抜けるので直感的には何の問題も無いように思えますが、成長期が短くなり 毛が十分に成長していない状態のまま早々と退行期、休止期と移ってしまうのが休止期毛性脱毛症です。

AGA(男性型脱毛症)はこの休止期毛性脱毛症に相当し、 AGAの人の抜けた毛を見ると、毛が細かったり、短かったりしていることで納得できますね。

ちょっと話がそれましたので、萎縮毛、成長期毛性脱毛症に話を戻しましょう。

 

抗がん剤治療と萎縮毛

ガンは脳からの指示とは無関係に急激に増殖する細胞が原因となる病気であるため、抗がん剤の中には増殖スピードの速い細胞を攻撃するように仕向けるものがあります。

発毛に関わる毛母細胞も、また、増殖スピードが速いので、抗がん剤の標的になり攻撃を受けてしまいます。

そのため、抗がん剤が毛母細胞の増殖をストップしてしまい、毛は成長期途中でどんどん抜けてしまいます。
抗がん剤投与から2、3週間程度で脱毛が起こり始め、抗がん剤の攻撃を受けた毛は萎縮毛の様相になります。

参照URL:国立ガン研究センター・がん情報サービス(一般の方向けサイト)「脱毛」
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/attention/chemotherapy/side_effect/alopecia.html

 

円形脱毛症と萎縮毛

円形脱毛症は10円ハゲのような軽症タイプが有名ですが、体毛の全てを失ってしまう重症タイプのものもあります。
円形脱毛症はストレスが強力な要因という説がメジャーでしたが、現在では免疫機構の乱れが原因と言われるようになりました。

ストレスが免疫異常を引き起こすということもありますが、円形脱毛症の直接の原因は免疫異常にあるというわけです。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患も免疫機構の乱れが原因と言われている病気ですが、アレルギー疾患に罹患している人は円形脱毛症にもなる人が多いことがわかっています。これらの症状は育毛剤育毛シャンプーでは治療が難しいことも知られています。

免疫が乱れることによって免疫細胞が毛母細胞を攻撃してしまい、毛母細胞の増殖を突然ストップさせます。

そのため、免疫細胞が攻撃した場所の髪の毛が急に成長できなくなってしまい、その部分だけ髪の毛が一気に抜けて円形脱毛症が発症します。
そのときに抜けた毛の毛根部を観察すると、その様相は萎縮毛になっています。

参照URL:日経電子版 ヘルスUP「突然現れて驚く円形脱毛症 免疫異常が原因」
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO97796340X20C16A2TZQ001?channel=DF140920160921

 

萎縮毛に気づいたら?

抗がん剤治療による脱毛については、主治医の方からも説明がありますのである程度の覚悟ができていますし、抗がん剤治療が終了すればほとんどの人が生え始めるから心配しないようにとも説明されます。

しかし、円形脱毛症の場合は知らぬ間に始まっていることも少なくなく、 美容師さんに言われて初めて気付く人もいるかもしれません。
10円、500円程度が1~2個程度なら自然治癒も考えられますが、再発しやすいのも円形脱毛症の特徴です。

ほとんどは軽症で済む場合が多いのですが、重症化してしまうと事態は深刻で、円形脱毛症の治療だけでなく本人の精神的ケアも重要になってきます。
しかし、円形脱毛症はAGAと違って疾患と認められておりますので、治療に際しては保険適用です。

従って、病気として認可されていないAGAのように治療費が全額負担ではないので、萎縮毛を発見したら皮膚科の病院を受診して、萎縮毛の原因を究明し治療を受けましょう。

今回は成長期毛性脱毛症にみられる萎縮毛を中心に述べましたが、どちらかというと、成長期が短縮されて早く休止期がきて抜けてしまう休止期毛性脱毛症のほうが多く、 AGAの他、甲状腺機能低下症、栄養不足、出産後のホルモンの不均衡などが該当します。

 

萎縮毛以外にも良くない抜け毛がある

悪い抜け毛の代表例として萎縮毛をご紹介しましたが、その他に、フケが付着した毛根や感嘆符(!)のような形状の毛根、毛根部に向かって細くなったり太くなったりしている抜け毛などもあります。

それぞれ、何らかの原因が必ず存在しており、不潔にしていることが原因であれば自力で抑えることもできるかもしれません。

いずれにしても、マッチ棒や綿棒のようなふっくらとした毛根でない抜け毛は免疫異常の可能性もありますので、まずは受診してその原因を究明しましょう。

① 正常な毛根部と萎縮毛のような毛根部の形状の違い
② 萎縮毛は成長期毛性脱毛症のときになりやすい
③ 成長期毛性脱毛症の代表例は抗がん剤治療による抜け毛と円形脱毛症が原因の抜け毛
④ 萎縮毛に気づいたら病院(皮膚科)を受診しましょう
⑤ 萎縮毛以外にもよくない抜け毛がある

今までは何も役に立たない迷惑でしかない抜け毛でしたが、抜け毛はたくさんの情報を私たちに教えてくれることがわかりました。
身体の内部を詳しく知るために血液とか尿や便、体液などが材料になるように、毛根部も髪の毛の病気を知る材料であると考えることができます。