男性型脱毛症(AGA)とは原因が異なる円形脱毛症ですが、円形脱毛所といえばストレスが原因と思っている人も多く、ストレス社会の現代においては誰もが円形脱毛症のリスクにさらされているということになります。中には、長く伸びた髪の毛で隠れているだけで、10円玉サイズの円形脱毛症、いわゆる、「10円ハゲ」と呼ばれるハゲはあるのかもしれません

円形脱毛症というとストレスなどが原因で起こると考えられている局所的な脱毛症で、額部分から頭頂部にかけて広範囲で抜け毛が起こる男性型脱毛症(AGA)とは全く別のものであり、多くは脱毛が起こる領域のサイズが10円玉のサイズと同等であることから「10円ハゲ」とも呼ばれる脱毛症です。

老若男女を問わず罹患するのが円形脱毛症であり、アメリカでは有病率は0.1~0.2%ということですし、生涯有病率でも1.7%程度で、それほど高頻度の脱毛症というわけではなさそうです。
ちなみに、日本人の統計データは見つかりませんでしたが、日本人の有病率も同程度であると考えられているようです。
実際のところは、大量の髪の毛によって隠されているために気付いていないというだけで、軽い症状の円形脱毛症の人はもっとたくさん居られるのかもしれません。

軽い症状の円形脱毛症と申し上げたのは、10円玉サイズの脱毛が単発ででるタイプのものもあれば、もっと広範囲に広がるタイプのものもあり、さらに悪化すると、脱毛が頭部だけでなく全身に広がるタイプのものまであり、円形脱毛症の範囲が広くなればなるほど治療も困難になるということですので注意が必要です。

円形脱毛症のことは知っていますが、症状によっていろいろなタイプがあるというのは初耳です
いくつかのタイプがあるといっても、放置することで症状が悪化することによって脱毛範囲が変化するというだけで、原因は同じであると考えられています
円形脱毛症というのは感染症のように広がっていくということですか?
一つ一つは10円玉程度の小さな領域の脱毛症ですが、それがいくつも出来てきて10円ハゲと10円ハゲが重なることで抜け毛の範囲が広がってくるというだけで、感染症のように広がるわけではありません
なるほど。しかし、いくら発症率が低いといっても、範囲が広がるというのは大ごとです。早期発見して治療した方が良さそうです
先ずは、円形脱毛症というものが、どういうものであるのかを見ていきましょう

 

円形脱毛症はどんな病気?円形脱毛症の5つのタイプ!

円形脱毛症が男性型脱毛症と異なるところは、男性型脱毛症が頭頂部や前頭部の毛髪がだんだん薄くなっていくのに対して、円形脱毛症はある部位がゴソッとまとめて毛髪が脱落します。
まとまって抜けるといっても、その範囲は10円玉程度の円形に近い形で抜けるだけで、かゆみや痛みも伴わないこともありAGAのように深刻に考える人も少ないようです。

痒みも痛みもなれば、刈り上げるなどで髪の毛を極端に短くしなければなかなか気づくことができませんし、1個や2個の10円ハゲができる円形脱毛症であれば、治療しなくても自然に治っているということもあるようです。


しかし、多発するとなると話は違ってきますし、円形脱毛症の範囲が広がると他人の視線が気になり、そのストレスで円形脱毛症が悪化してくるというケースもあります。

円形脱毛症の5タイプ

  • 単発型:最も多くみられるタイプで、1~2個で、大きさは1~数センチです。
  • 多発型:数十か所もできてしまうことがあります。最初は単発だったのが、次第に数を増やしていく場合、いきなり数十か所多発してしまうことも。広範囲の脱毛につながりやすい現象です。
  • 多発融合型:頭部全体にランダムに多数の脱毛が見られるびまん性と側頭部や後頭部の生え際に発生する円形脱毛症が連なって蛇行していく蛇行性の2種類があります。後者は子供にみられることが多く、前者は放置すると全頭型や凡発型に移行することが多いということです。
  • 全頭型:頭部全体に発生する円形脱毛症が重なり合って、最終的には頭全体の頭髪が無くなります。
  • 汎発型:毛髪だけでなく、眉毛、腋毛、髭、陰毛など全身の毛が抜けるタイプで、円形脱毛症の中で悪性円形脱毛症や全身脱毛症と呼ばれる最も重症の円形脱毛症です。

参照元:ウィッキペディア 円形脱毛症
https://ja.wikipedia.org/wiki/円形脱毛症

一つ一つの円形脱毛症は10円程度の小さなものでも、幾つも重なると笑っていられなくなるというわけですね。子供は刈り上げる機会も多く蛇行性の多発融合型というような症状になるといじめられる原因にもなりかねませんね
蛇行性の多発融合型はお子様の髪型のために発見されるというだけで、大人は気付いていないだけかもしれません
ところで、円形脱毛症の原因は、昔からよく言われているストレスではないのですか?
円形脱毛症は自己免疫疾患という免疫トラブルといわれていますが、ストレスは自己免疫反応を引き起こす一つの要因であるとは考えられていますが、必ずしも、ストレスだけではないようです

 

円形脱毛症が自己免疫疾患と言われる理由は?

円形脱毛症は、毛母細胞が一度に委縮して死んでしまうため、成長期にあった毛髪が局所的に一気に抜けてしまう現象です。

言い換えるならば、円形脱毛症は、正常であるはずの毛母細胞が自分の免疫システムに攻撃されて死んでしまうために毛髪を育てることができなくなって起こる、すなわち、本来は異物やアブノーマルな細胞を排除するために働くはずの免疫システムが間違って正常な毛母細胞を攻撃してしまう自己免疫反応が原因で起こる自己免疫疾患の一つであると考えられています。
誤作動する免疫システムを担っているのがリンパ球であり、リンパ球が排除しようとする物質が毛髪の色素であるメラニンに関連するたんぱく質と推測されています。

すなわち、リンパ球という免疫細胞が毛髪をつくる際に分泌されるメラニン、あるいは、メラニン関連のたんぱく質を異物と勘違いして破壊するための炎症反応を引き起こし、毛根全体ににダメージを与えてしまうことで起こるのが円形脱毛症というわけです。

リンパ球は毛根に毛母細胞を供給する毛包幹細胞の存在するバルジ領域にまで影響することがないため、リンパ球が無くなれば毛髪は再生されますが、炎症が長引いて毛根のダメージが大きくなると毛髪が再生されなくなるということもあります。

ということは、円形脱毛症を見つけたら炎症を鎮静化させながら、リンパ球が誤作動する原因を取り除く必要があるというわけですね?
ところが、円形脱毛症は軽症である単発型の時には見つけにくく自然に治癒しているというケースも少なくありません。多発型や多発融合型でになれば長髪の人でもさすがに気付くとは思いますが・・・
そうなってからでは、手遅れということはありませんか?
円形脱毛症については分からないことも多く原因も一つではなさそうですし、問題視される多発型や多発融合型など悪化した状態になると治療が難しいと言われています

 

円形脱毛症を引き起こす原因はやっぱりストレス?

ここからの内容は、2010年に日本皮膚科学会が「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2010」として発表した論文に詳細が記載されていますが、一般の方でも理解しやすいように抜粋して書き直してみました。
詳しいことが知りたいという方は、以下の参照元をクリックして、原文を読んでいただければと存じます。

参照元:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2010
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913324_2.pdf

円形脱毛症とストレスの関係についてはよく言われていますが、確かに、ストレスを緩和するためにホルモンや神経伝達物質が利用されることで、それらの物質のバランスが崩れて免疫システムの誤作動である自己免疫反応を引き起こす可能性があることから、ストレスは円形脱毛症を引き起こす原因の一つであることは考えられます。
実際に、ストレスが円形脱毛症を引き起こす原因の一つであるという論文も発表されています。

31名の円形脱毛症患者へのヒアリングにおいて、74%の人がうつ病などの精神疾患に罹患している、あるいは、診断されたことがあるという結果が得られている。ただし、うつ状態と円形脱毛症の症状に因果関係は認められなかった。(米国)

参照元:PubMed ”Lifetime prevalence of psychiatric disorders in patients with alopecia areata.”
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1884604

21名の重症の円形脱毛症患者に催眠療法を5年間実施したところ、12名の患者に頭髪の成長が確認され、12人中9人の患者に脱毛面積の減少が確認された。(ベルギー)

参照元:PubMed “Hypnotherapeutic management of alopecia areata.”
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16844504

これらの結果から、精神疾患、すなわち、ストレスが何らかの形で円形脱毛症を誘発していることは推測されますが、日本皮膚科学会ではストレスの定義や評価方法に統一的なものが無く、医学的根拠と考えるには不十分であると判断しています。

実際のところ、ストレスに関係なく円形脱毛症を発症している患者もいることになりますし、ストレスとは縁の無さそうな赤ちゃんでも円形脱毛症は確認されていることを合わせて考えると、ストレス以外にも円形脱毛症を誘発する要因はあると考えられます。

ストレスは円形脱毛症の原因となる有力候補であるということは分かりましたが、ストレス以外の要因というのはどのように考えられているのでしょうか?
ストレス以外の免疫システムが誤作動してしまう要因としては、3つの原因が考えられています

 

円形脱毛症を誘発する3つの原因とは?

科学的根拠にかけるとはいえども、ストレスが円形脱毛症を引き起こす一つの要因であることは容易に推測されますが、免疫システムが過剰に反応するアトピー性皮膚炎や円形脱毛症以外の自己免疫疾患には円形脱毛症を併発するケースが多くみられることは知られています。

また、円形脱毛症を併発する病気に遺伝的な要素が強いように、円形脱毛症にも遺伝子が関係していると考えられています。

円形脱毛症を起こす病気や原因

  • 自己免疫疾患:橋本病と呼ばれる慢性甲状腺炎や全身に白い斑ができる尋常性白斑、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、重症筋無力症などの髪の毛とは関係の無い自己免疫疾患が円形脱毛症を併発しやすい病気として知られています。
  • アトピー性皮膚炎:アレルゲンに対して免疫システムが過敏に反応して起こるアレルギー性皮膚炎で、4型アレルギーと呼ばれるアトピー性皮膚炎では円形脱毛症と同じタイプのTリンパ球が関係しています。
  • 遺伝:自己免疫疾患やアトピー性皮膚炎と同様に遺伝的な要因もあると言われており、円形脱毛症の家族がいる場合には円形脱毛症を発症するリスクが高いとされています。
結局のところ、はっきりしているのは円形脱毛症が免疫系のトラブルによって起こる自己免疫疾患であるということで、同じような免疫系トラブルであるアトピー性皮膚炎や円形脱毛症以外の自己免疫疾患が円形脱毛症を併発する可能性が高いということですね
遺伝的な要素もあるということから、ストレスに無縁な赤ちゃんに円形脱毛症が起こることも説明できます
でも、アトピー性皮膚炎や自己免疫疾患といった治りにくい病気と併発する可能性が高い上に、遺伝が絡んだいる可能性まであるとなると、治療は難しいのでしょうか?
重症の場合は治りにくいようですが、軽度の場合、すなわち、単発の円形脱毛症では、原因と考えられるストレスを減らすだけで自然に治癒するケースもあるようです

 

円形脱毛症の治療法

円形脱毛症は軽症から重症まで様々で、脱毛部位が1,2か所であれば自然治癒も珍しくありませんが、多発型、多発融合型、全頭型、凡発型と症状が重くなるにしたがって治療が難しくなります。
1か所や2か所程度の円形脱毛症で進行することが無さそうであれば、様子を見るか炎症を抑えるためのステロイド系の塗り薬というのが一般的ですが、重症の場合には様々な治療が考えられます。
ただし、重症の円形脱毛症の治療方法が確立されているというわけではなく、詳細なメカニズムが分かっていないのですから根本的な原因を抑える治療方法があるわけではなく、現在現れている症状を抑えるための対症療法が中心となります。

日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2010において、専門医によるこれまでの経験をもとに治療のガイドラインを発表していますが、各医師はこれを参考に治療方針を決めていくと考えられますので、目的や期待される効果などについて納得いくまで担当医師と相談することをおススメします。

重症の円形脱毛症における対症療法

  • ステロイド剤:重症の円形脱毛症が自己免疫疾患であることから、免疫抑制効果あるステロイド剤が選択されます。炎症は毛包内部で起こっているため外用薬では病巣に届かない可能性が高く、内服薬や注射でステロイドを患部に注入する方法が効果的です。短期間で大量のステロイド剤を点滴するステロイドパルス療法が利用されることもあります。ただし、脱毛を抑えられたとしてもステロイド投与の中止によって再発するため、胃潰瘍や骨粗しょう症などの副作用のリスクを考慮する必要があります。
  • 局所免疫療法:人工的に皮膚の炎症を起こす薬剤を投与し、毛根を攻撃しているリンパ球のターゲットを別方向に向けさせる治療法です。この方法は、アトピー性皮膚炎と併発している場合には使えませんし、他の治療方法と併用することはできません。
  • 免疫抑制剤(シクロスポリンA):薬剤の名前の通り、毛根に炎症を起こしているリンパ球そのものを減らす治療法ですが、効果が確立されたものではなく日本皮膚科学会のガイドラインでは推奨されていません。
  • PUVA治療法:紫外線の吸収を強める薬(オクソラレン錠)を服用して、患部に紫外線を照射することで過剰に反応しているリンパ球の働きを抑えることが期待されます。ただし、毛髪が発生すると紫外線照射ができなくなるという欠点もあります。
  • 抗ヒスタミン薬・セファランチン:抗ヒスタミン薬は免疫システムによって分泌される炎症を起こすヒスタミンを抑える薬で、セファランチンは抗ヒスタミン薬と類似効果のある植物由来のアルカロイドです。
他にも、液体窒素療法ドライアイス圧定量法漢方薬の利用など様々な方法はありますが、それぞれにメリット・デメリット、副作用リスクも考慮して医師が治療方法を決めていくことになります。
重症の円形脱毛症には「これっ!」といった治療法がなく、根治は難しいようですね
日本皮膚科学会でも治療方法を模索している段階で、今後の研究成果が期待されるといった感じです。ただし、発症してから1年以内の軽い症状であれば、アトピー性皮膚炎や自己免疫疾患の既往歴が無ければ8割の患者が回復したという報告もあります
いずれにしても、早期発見、早期治療が大切ということですね
何度も申し上げたように、範囲が広がり重症化すればするほど治りにくいと考えておいた方が良いでしょう