ノコギリヤシは頻尿、多尿、尿漏れなど中高年の泌尿器系の悩み対策用のサプリメントとしていくつもの製品が販売されています。一方で、前立腺肥大症に効果があるのではと期待され研究されているという経緯から、育毛効果に対する期待感もありノコギリヤシを含む育毛サプリも市販されていますが、これに関しては否定的な意見もあり、本当のところはどうなのかという興味をもってお方も多いようですので検証してみたいと思います

ノコギリヤシエキスを配合したサプリメントは、サントリー、小林製薬、アサヒグループ(アサヒカルピスウェルネス株式会社)などの大手企業、DHC、やわた(八幡物産株式会社)などの健康食品で有名な会社などから中高年の男性に多い泌尿器系のお悩み対策の健康食品として数えきれないほどのサプリメントが販売されています。
多くの企業が泌尿器系、特に、男性の泌尿器系の悩み対策のためのサプリメントとしてノコギリヤシに注目していることから、多尿、頻尿、尿漏れなどの効果は本物のように感じられます。

一方、ノコギリヤシエキスを配合している育毛サプリも数多く見受けられ、本サイトで紹介させていただいたAGALPもその一つですし、チャップアップケフトルイクオスなどの外用育毛剤の効果を体内からサポートするために同時販売されている育毛サプリメントにも、中心成分ではないにしても、ノコギリヤシエキスが配合されています。
スカルプD ディグニティプレミアムシャンプーのように、ノコギリヤシエキスを配合した育毛シャンプーもあるくらいです。

一方、ノコギリヤシの育毛効果や前立腺肥大症に対する効果については賛否両論で、効果があるとする人もいればないという人もいるという科学者ではない一般消費者が困惑するような状況にあるのも事実です。

ノコギリヤシエキスは育毛サプリに入っているのですから、何らかの育毛シャンプー育毛剤のような効果が期待できるのではないのですか?
ノコギリヤシは原住民がスタミナ食として食べていた伝承成分であって、研究はされているものの効果が科学的に示されているのは男性の排尿障害を改善することぐらいです
ということは、ノコギリヤシの育毛効果というのは怪しいということなのでしょうか?
育毛効果が無いということも明確にされているわけではありませんので嘘というわけでもないと思いますが、どのような経緯で育毛効果が期待されるようになったのかを検証してみましょう

 

ノコギリヤシはヨーロッパでは前立腺肥大症の治療薬?!日本では?

ノコギリヤシはアメリカ南西部に固有のヤシの一種で、葉柄、すなわち、葉と幹を繋ぐ部分にたくさんの棘がありノコギリのように見えることが和名につながっているそうです。
原住民である北米インディアンはノコギリヤシの実を古くから男性の強壮剤として用いられていた歴史があり、男性ホルモンに関わる何らかの影響があるのではないかと考えられるようになりました。

一方、19世紀に入ってヨーロッパに伝承された後は、ノコギリヤシは前立腺肥大症の影響で起こる排尿障害を抑えることを目的としたハーブとして利用されるようになり、前立腺肥大症治療薬としての研究が進められています。
ヨーロッパでは、伝統的に使用されている安全性の高い植物薬であると認め、前立腺肥大症の治療薬として利用されています。

ところが、日本におけるノコギリヤシの位置づけはというと、医薬品として認めることができるほどの科学的根拠が無く、「医薬品的効果効能を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料) 」、いわゆる、健康食品として使用しても良いという程度でしかありません。

言い換えるならば、日本では育毛どころか前立腺肥大症に対する治療効果についても懐疑的な状態にあり、欧米で使用される前立腺肥大症によって起こる排尿障害に対するサプリメントの素材として各社がノコギリヤシサプリを展開しているというわけです。

海外では医薬品として認可されている成分が日本では認可されていないためにサプリメントに利用されるというのはよくある話ですね
漢方薬の生薬も同じことですが、日本では効果のメカニズムが科学的に証明されていなければ医薬品として承認されることがありません
効果が無いということではなく、何故効いているのかは分からないけれどもノコギリヤシで排尿障害が改善されているということですね
そういうことです。ノコギリヤシエキスの場合、成分が複雑すぎてどれが有効成分であるのかが分かっていませんし、効果が弱くて効果が無かったというデータもあれば、長期的な利用で効果があったというデータもあるようです

 

ノコギリヤシに育毛効果が期待されるようになったのか?

ノコギリヤシのサプリメントが改善するという頻尿や尿漏れなどの排尿障害は前立腺肥大症にみられる典型的な症状であり、肥大した前立腺が膀胱や尿道を圧迫することによって起こっています。
前立腺肥大症が発症するメカニズムは明確にわかっているわけではありませんが、加齢とともに減少してくるテストステロンという男性ホルモン活性を補うために男性ホルモン活性の強いジヒドロテストステロン(DHT)を合成することが原因と考えられています。

さて、前立腺肥大症の治療薬に使用される成分が男性型脱毛症(AGA)の治療薬として有名になったフィナステリドやデュタステリドであり、5αリダクターゼという酵素を阻害することによってDHTの合成を抑制する働きがあります。

この一連の流れから予想されることが、フィナステリドやデュタステリドと同じように前立腺肥大症を抑えることができるノコギリヤシエキスもDHTの合成を抑えてAGAの進行を抑制するという仮説です。

国立研究開発法人である医薬基盤・健康・栄養研究所の「健康食品」の素材情報データベースにあるノコギリヤシの項目を見てみると、「俗に、「泌尿器疾患に有効である」と言われ、前立腺肥大症に対する作用など、一部にヒトでの有効性が示唆されている。」と記載されており、前立腺肥大症に対する作用は認めているものの、アメリカで行われた1日に160㎎を1回ないし2回投与した試験では1年間投与しても効果が認められなかった論文があることから、現時点では効果は無いと判断しているようです。

参照元:医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の素材情報データベース ノコギリヤシ
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail70.html

 

ノコギリヤシがAGAに効果があるという最新論文

日本ではノコギリヤシエキスはAGAはおろか前立腺肥大症に対して有効であるという確か科学的証拠は肥ないという判断ですが、裏を返せば、効果が無いという科学的なデータがあるわけではありません。

実際のところ、投与量や投与期間などを変えた治験結果があるわけではありませんし、否定的なデータが出る前にも短期的な投与では認められなかった効果が長期的に続けることで認められるようになったという結果もあるようです。

そのような背景のもと、イタリア研究機関がプロペシアの成分であるフィナステリドほどではないけれど、ノコギリヤシにもAGAを改善する効果があるという研究論文を2012年に発表しました。

 

ノコギリヤシの育毛効果に関する研究論文の概略

初期~中期までのAGAの患者さん100名を以下の2班に分けて、2年間にわたる長期投与試験を行いました。

  • ノコギリヤシを一日320mg、二年間毎日投与
  • フィナステリドを一日1mg、二年間毎日投与(プロペシアに配合されているフィナステリドと同量)

2年後に効果を実感できた患者さんは、ノコギリヤシ投与グループでは38%、フィナステリド投与グループでは68%という結果が出たということで、ノコギリヤシはAGA治療薬であるプロペシアほどではないにしろ、弱いながらもAGAの症状を改善する効果があったということです。

ちなみに、改善効果が見られたという患者さんにおいて、フィナステリド投与グループでは前頭部と頭頂部に効果が認められているにもかかわらず、ノコギリヤシ投与グループでは前頭部のみであったというのも特徴的です。

参照元:NCBI Resources「Comparitive effectiveness of finasteride vs Serenoa repens in male androgenetic alopecia: a two-year study.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23298508

 

この論文によると治療薬ほどの効果は期待できませんが、AGAの初期であるM字ハゲが気になるころであればノコギリヤシの育毛サプリも試してみる価値がありそうです
初期段階だけでなくAGAの改善途上でも有効そうです。先に、身体の内部から育毛をサポートするためにノコギリヤシを配合した育毛サプリを用意している外用育毛剤もあることをお話ししましたが、体の内外から育毛をサポートした方が期待度もアップしそうです
ところで、ノコギリヤシエキスの育毛効果のメカニズムに迫るような情報はあるのですか?
2012年に治験による統計的なデータが出ている程度ですのでどこまで進んでいるのかはわかりませんが、推測はできます

 

ノコギリヤシの育毛メカニズムは?

AGAは毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体にDHTが結合することによってヘアサイクルが変化し、成長期にある毛髪が抜け落ちてしまう現象ですので、ノコギリヤシに期待される効果としては以下の2点が考えられます。

  • 5αリダクターゼを阻害してDHTの合成そのものを抑える
  • 合成されたDHTが男性ホルモン受容体に結合するのを阻害する

フィナステリドやデュタステリドの育毛効果は前者であることが明らかとされていますが、DHTの男性ホルモン受容体への結合力が強いことを合わせて考えると、ノコギリヤシの育毛効果は後者の方なのかもしれません。

 

ノコギリヤシエキスに含まれる育毛成分は?

サプリメントで使用されているノコギリヤシエキスというのは、一般的には、果実の抽出物であり、ラウリン酸・リノール酸・オレイン酸などの脂肪酸類、β‐シトステロールに代表されるフィトステロールが豊富に含まれています。
フィナステリドと比較実験をしているということは、フィナステリドと同じように増加傾向にあるDHTを抑えることが期待されていると推測されますが、ノコギリヤシエキスに含まれるβ‐シトステロールはテストステロン、DHT、フィナステリド、デュタステリドといったAGAに関係する様々な物質と骨格となる化学構造が似ています。

効果の詳細は今後の研究次第ということですが、5αリダクターゼや男性ホルモン受容体にβ‐シトステロール結合することでDHTの働きを抑えることがあるのかもしれません。

併せて、ノコギリヤシエキスに含まれるリノール酸に代表される脂肪酸は血中コレステロールを抑え血液をサラサラにする効果も期待されますので、毛髪の育成に必要な栄養素が毛包に届きやすくなるという効果も期待できるかもしれません。

現時点ではノコギリヤシエキスは育毛効果があるかもしれないという程度に考えて、過度には期待しない方が良さそうです。副作用がないのであれば試してみる価値があると考えられそうです
ノコギリヤシそのものは長い食歴のあるものですし、3年間の臨床試験で安全が確認されているということですが、エキスとなると何が起こるかわかりませんので注意は必要です

 

重篤な病気を隠してしまう恐れも!ノコギリヤシを摂ってはいけない人は?

経口摂取の場合には副作用があっても軽度のものが多いようですが、吐き気、胃腸障害、めまい、頭痛、血圧上昇などの報告があるそうですので、消化器系に不安のある人や高血圧の人は注意した方が良さそうです。

また、血液をサラサラにする効果のあるノコギリヤシは、抗血液凝固薬や抗血小板薬のような血液が固まりにくくする薬を飲んでいる人は出血のリスクが高くなりますし、前立腺肥大の進行を抑えることで前立腺がんの発見が遅れる可能性もあるそうです。

また、男性ホルモン活性を抑える効果がありそうですので、胎児や乳児の正規の成長を妨げる可能性があるため、妊娠中や授乳中の方は利用しない方が良いということです。

参照元:医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の素材情報データベース ノコギリヤシ
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail70.html

血栓症や動脈硬化などの出血性疾患の治療を受けている方や出血のリスクを高める可能性のある薬を飲んでいる方は特に注意が必要で、担当医師に相談する必要があります
副作用は大したことは無さそうですが、飲んではいけない人や飲むときに注意した方がよいという人は結構複雑そうです
エキスとして高濃度に摂取するという実績が少いので、注意をした方が良いということです。妊娠・授乳中の方はもちろん、何らかの治療を受けているという方はノコギリヤシのサプリを試す前に担当医師に相談することをおススメします