キューティクルと薄毛は関係あるのでしょうか?

結論を先に言えば、「ある」ということになります。

2009年、国立遺伝学研究所の相賀裕美子教授代表とするグループと慶応義塾大学の岡野栄之教授グループとの共同研究で明らかにされています。

今まで、キューティクルの欠損が薄毛や脱毛につながるとは考えられていなかったわけではありませんが、相賀教授たちの研究でそのつながるメカニズムが解明されました。

2009年とやや古い研究ですが、キューティクルの存在が薄毛改善に重要な物質であることがよくわかる内容でもあるので、取り上げてみました。

まずは、キューティクルについて詳しくなることが、この研究内容を把握しやすくなるので、前半、キューティクルの基本情報、後半から研究内容を紹介します。

キューティクルの構造を知ろう!

一本の毛髪は外側からキューティクル、次にコルテックス、中心の芯の部分がメデュラと、三層に構成されています。

それぞれ、性質や役割が異なります。

 

キューティクル(毛小皮)

キューティクルは、毛髪の一番、外側をおおっています。

キューティクルは髪にツヤを与える成分として知られていますが、それだけでなく、外部の刺激から内側にあるコルテックスなどを守り、たん白質や水分を保持しようとする働きもあります。

キューティクルは頭皮のほうから毛髪の先に向かって、うろこ状(紋理)に重なって連なっているように見えます。健康な毛髪の紋理の形は揃っていますが、ダメージの強い毛髪は紋理の形状が乱れています。

成分はたん白質のケラチンですが、非常にもろく、ブラッシングや洗髪などによってはがれやすいのが特徴です。

 

コルテックス(毛皮質)

コルテックスは一本の毛髪の約9割近くを占めています。ラグビーボールのような形をしており、ケラチンの集まりです。

毛髪のコシ、ハリの強さは、このコルテックスのたん白質や水分の状態で変わります。約13%前後の水分を含み、髪の色を決めるメラニン色素も含まれており、外側のキューティクルによって守られています。

従って、キューティクルがはがれてしまうと、コルテックスの中のたん白質や水分が露出して、髪がパサつき、ツヤが消失してしまいます。

 

メデュラ(毛髄質)

毛髪の芯の部分に存在し、キューティクルやコルテックスに比べ、柔らかいたん白質でできています。外部の影響を受けて空洞ができやすく、断面図はハチの巣のようになっています。

毛髪が太くなるほど、メデュラの量が多く、柔らかい乳児の毛髪や産毛にはメデュラは含まれず、一般的に加齢によって太くなる反面、強さは無くなっていくようです。

参考URL:キューティクルってどこ?毛髪の基礎知識

http://www.shiseidogroup.jp/binolab/h_0001/

 

水分やパーマ液などはキューティクルの重なり合う紋理の間に染み入る

健康的な毛髪はうろこのような紋理が4~8枚、重なって表皮のキューティクルを作っています。

水やアルカリ性成分が毛髪に付着すると、重なり合っている紋理の間に浸透していき、外側に向かって膨れ上がり、キューティクルが開きます。

因みに紋理の形状は指紋のように一人一人、異なるため、犯罪の精査によく活用されています。

 

次に、キューティクルと薄毛の関係は、毛髪の構造を一部でいいので知っておくと、よりわかりやすくなるので、それに必要な情報を紹介します。

 

毛髪の構造

頭皮から外部に出ている部分を毛幹部、頭皮の下に埋もれている部分を毛根部といいます。そこに毛包があり、毛包の後ろ側にあるのが毛球です。

毛球の下のほうにへこんでいる部分があり、そこに発毛の司令塔である毛乳頭が存在しています。

毛乳頭には血管が張り巡らされており、増殖して発毛させる毛母細胞に栄養を運んでいます、

運ばれてきた栄養成分からできたケラチンというたん白質によって毛母細胞はどんどん分裂(増殖)し、作られた毛髪をどんどん、頭皮の上へと押し出していきます。

押し上げられた毛髪は角化し、前述した3つの層に分かれていきます。

 

毛髪は毛先が伸びるのではない

食事などから摂った栄養成分は、血流にのって毛母細胞まで運ばれていきます。その栄養成分を使って毛髪を作り、そこから頭皮外へと出ていき、伸びていきます。

つまり、下から押し上げられながら伸びていきます。

血行が悪くなると、頭皮下で毛髪が作られにくくなるとよく言われるのは、このような仕組みがあるからです。

参考URL:毛髪のしくみ

http://www.riyo.or.jp/care/mohatu.html

では、今までの情報をもって、キューティクルと薄毛の核心に少しずつ近づいていきます、

 

はがれたキューティクルはもう修復しない

毛髪を大きく分けると、毛幹部と毛根部に分別することができますが、大雑把な言い方をすれば、頭皮の外に出ている毛髪、つまり毛幹部は死んだ細胞の固まりであり、毛根部は生きた細胞の固まりということになります。

この説明で、「はがれたキューティクルはもう修復しない」という意味がわかった方がいらっしゃると思います。

枝毛ができると、その毛髪を修復させようとするのではなく、枝毛の部分をハサミで切ってしまうことが多いのはその毛髪は角化して死んでしまっているため、修復などありえないわけです。

キューティクルも同じです。いったん、はがれてしまうと、その毛髪は抜けるまで剥がれたままというわけです。

 

生えてくる毛髪を今度こそ大切に

ヒトの毛髪は同じ毛髪が一生、伸び続けるのではなく、ある程度、成長した後は自然に抜けていきます。その後、そこから再び新しい毛髪が押しあがってきます。

このときの毛髪はしっかりとキューティクルに包まれているような健康的な毛髪であれば、毛髪の量は常に一定です。

毛髪の新旧入れ替わりの期間をヘアサイクル(毛周期)といい、ヒトのヘアサイクルは約5年と言われています。

ヘアサイクルを経て次に押し上げられてくる毛髪を、良い性状のものにするために食生活を初めとして、生活習慣の改善が重要になります。

 

キューティクル層で脱毛に関与している遺伝子:Sox21転写因子を発見

国立遺伝学研究所に在籍する相賀裕美子教授研究室が慶応義塾大学の岡野栄之教授研究室との共同研究の中で解明されたことが2009年、PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences)の電子版に掲載されました。

AGAに見られるように、薄毛や脱毛は大体、男性のほうから色々、示唆されることが多いものですが、この研究がもたらした成果は男女、性差に関係なく、薄毛、脱毛が起きるということを解明したことです。

また、どちらかというと、髪に艶やかさ、保湿性アップとしての成分といわれていたキューティクルも薄毛、脱毛に関与していることがわかりました。

参考URL:マウス発生工学を用いた初期発生現象の解析

https://www.nig.ac.jp/nig/ja/research/organization-top/laboratories/saga

参考URL:岡野教授

http://www.okano-lab.com/okanolab/okano

 

Sox21転写因子

転写因子とは遺伝子DNAに結合するたん白質の一つ。このDNAが持っている情報を写し取る、いわゆるコピー(RNA)ですが、その相当する細胞の状態でコピーの速度を速めたり、抑えたりする働きをもっている因子です。

この研究の主役であるSox21転写因子ですが、すでに岡野教授研究室が神経系に関与する遺伝子の一つであることをつきとめていました。

そこに、相賀教授研究室が実験用に作成されたノックアウトマウスを用いて、Sox21転写因子は神経系以外でも重要な働きをすることを解明しました。

 

Sox21転写因子を用いた実験内容と結果

ノックアウトマウスは、Sox21転写因子を不活化して生成されたマウスです。

このマウスは発毛の過程は正常でありながら、生後15日頃から早くも脱毛が開始され、一週間で無毛状態になります。

因みに普通のマウスのヘアサイクルは約25日間と言われています。

ところが、無毛になったノックアウトマウスはまた、発毛が始まるのです。しかし、約25日後には再度、脱毛するという繰り返しをします。

普通のマウスのように一定期間、毛が皮膚に定着しない理由は、Sox21転写因子の有無に関係があるということをこの実験で判明しました。

Sox21転写因子が無ければ、早期に脱毛を開始してしまうことになるわけです。

相賀教授たちはSox21転写因子がキューティクル層に発現し、キューティクル層の成分であるケラチンの遺伝子の発現をコントロールしていることを突き止めました。

要するに、Sox21転写因子がなければ、ケラチンの量は急激に減少するということです。毛の成分のほとんどがケラチンです。

そのため、ケラチンが減少すると、毛を頭皮下の毛根に付着させておくことができなくなります。

人間の毛髪や毛根を調べた結果、マウス同様、Sox21転写因子がキューティクル層に発現することが確認されました。

 

男女関係なく、共通におきる脱毛

薄毛や脱毛はどちらかというと、男性と女性によって、原因が様々でした。

しかし、今回の研究発表は原因が男性ホルモンでもない、更年期の女性ホルモン低下によるものでもなく、男性にも女性にもあるキューティクルに関係している研究発表です。

この研究結果を踏まえた新薬開発などが期待されます。

2009年に発表されて以来、大きな進展がみられないのか、経過情報が見当たらないのですが、薄毛、脱毛にはあまり影響がないとされていたキューティクルにもスポットが当たりました。

このことは、キューティクルを傷付けないようにすることは、髪を艶やかにするだけでなく、脱毛防止につながることを示唆しています。

ブラッシングによる摩耗、紫外線、パーマ、毛染めなど、キューティクルを傷めてしまうものから遠ざけることを今まで以上に心がけ、キューティクル保持の面からも薄毛や脱毛を防止しましょう。

参考URL: 6.脱毛の原因遺伝子の同定と分子機構の解析

https://www.nig.ac.jp/labs/MamDev/japan/research/research06.html

参考URL:脱毛の原因遺伝子を特定;キューティクルは重要

https://www.nig.ac.jp/hot/press/090526sagayogo.html